ピーター・バラカン「ラジオに魔法を取り戻す」

2012年9月、InterFMの執行役員に就任したピーター・バラカンが語る、ラジオと音楽、そして、これからのInterFM。

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僕が最初に音楽を聴いた記憶があるのはラジオですね。小学生の時です。土曜日の朝にやっていた子供向けのリクエスト番組を毎週聴いていました。今でも、その時かかっていた曲を耳にすると、当時のロンドンの家や真空管ラジオが映像として蘇ってきます。

当時、一番の音楽の情報源は、ラジオでした。ビートルズがデビューしたのが、僕が11才の時。その後も、ローリング・ストーンズ、ボブ・ディランなどのレコードが欲しくて欲しくてたまりませんでしたね。クリスマスや誕生日にはいつもレコード券をもらっていました(笑)。ローリング・ストーンズの"Satisfaction"(1965年発表)のイントロを初めてラジオから聴いた時は、本当に衝撃的でした。あのファズギターの音は、それまでなかったですから。え?何これ?と思うぐらい凄いスリルでした。

プロコル・ハルムの"青い影~A Whiter Shade of Pale"(1967年発表)もイントロから、うわ〜っと寒気がしたのを覚えています。そういえば、大学時代になんとなくラジオを聴いていた時に、ミック・ジャガーがゲストに出ていて、DJがミックに「最近のお薦めは?」と質問したんですけど、その時にミックがお薦めといってかけた曲がステイプル・シンガーズの"I’ll Take You There"(1972年発表)。ステイプル・シンガーズは、それまで全く知らなかったんだけど、まさに音のマジック!3分間、その曲を聞いた直後に家を出て近所のレコードショップにシングルを買いに行きました(笑)。

ラジオを聴いていなかったら音楽にハマることもなかったし、日本に来ることもなかっただろうし、全く違う人生だったでしょうね。DJになってラジオで音楽を伝える側になりましたが、今では「あなたの影響でこういうアーティストを聞くようになった」と言ってくれる人に出逢った時が一番嬉しいですね。そのためにやっているようなものかもしれない。

テレビにないラジオの一番の魅力は、送り手側と受け手側が直接結びつくことだと思う。僕もリスナーの時にはDJが自分に語りかけてくれているような気持ちになっていたしね。

録音音楽が出来て100年以上、世界中で素晴らしい音楽が沢山作られていて、僕が知らない音楽も膨大にある。でもその素晴らしい音楽が、今、日本のラジオ局の電波に乗っているかというと、殆どが乗っていない。これでは音楽文化は衰退してしまう危険性がある。それを防ぐためにInterFMでは、出来るだけ幅広く素晴らしい音楽を紹介していきたい。

平日の朝の番組『BARAKAN MORNING』をやっていた時に感じたのは、たまたま朝聴いていた人たちから、「良い音楽かけていますね。気がついたら毎日聴くようになりました。」というメイルを沢山頂いたこと。

元々音楽が大好きなコアなリスナー層だけでなく、潜在的に良い音楽を求めている人達は沢山いるんです。InterFMがリスナーのために良い音楽をかけていれば、もっと多くのリスナーがラジオを聴いてくれるようになるのではないかと考えています。

それを実現するのは本当に大変な事だと思いますが、今、私たちがやらなければいけない。

人間はモノを持てば持つほど保守的になる。僕の大好きな言葉は、ボブ・ディランの曲"Like A Rolling Stone"の一節"When you got nothing, you got nothing to lose"(何も持っていなければ、失うものはない)。

少なくともクリエイティヴな仕事をしている人は、冒険心を持つべき。実際に持っているものがあっても、何も持っていないという事を想像して仕事をするべき。その気持ちを持っていれば、ラジオに魔法を取り戻す事も出来ると思うんです。

>>『ラジオに魔法をかけた100曲』リスト