嘉衛門 presents Spinning Wheels! Vol.98

2015/02/12 / Category:嘉衛門 presents Spinning Wheels

嘉衛門 presents Spinning Wheels!
嘉衛門

モリスン・ホテルは、とっくの昔に、姿を消している。
わかってはいるけれど、ここもまた、LAを訪れるたびに、
ごく自然に、ハンドルを向けてしまう場所。

1970年代を迎えたばかりのころ、リード・シンガーのラストネームが
たまたまモリスンだったバンドが、そこで、半ば勝手に撮った写真を、
アルバム・ジャケットに使っている。

いい時代だったのだろう。
その、じつにナチュラルなジャケット・フォトに誘われて、ということだ。

モリスン・ホテルの跡地にただよう空気のなかに、しばらく身を置いてから、
大きな通りに出ると、美しく輝く、ステイプルズ・センターのロゴが、
目に飛び込んできた。
穏やかな照明を受けて、円形の、巨大な建物全体が、夜空に浮かんでいる。
宇宙船のように、見えなくもない。

そこでは、数日前に、年に一度の、大きな音楽イベントが終わったばかり。
今は、エリア全体が、ひっそりと静まりかえっている。

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M.1 FACES “STAY WITH ME”

フィゲロア・ストリートで、ダウンタウンを、北に向かう。
坂を昇っていく途中、何度か、ガラス張りのビルに映る、
自分の車の姿を確認できるこの道も、好きな場所の一つだ。

ラジオから、数日前の音楽イベントで、大きな注目を集めた曲が流れてきた。
過去のいろいろな思い出と、いろいろな形でつながる曲だ。
そういうことを繰り返しながら、音楽は、
たくさんの人たちの心のなかで、生きつづけていくのだろう。

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M.2 TOM PETTY “I WON’T BACK DOWN”

嘉衛門 presents Spinning Wheels! Vol.97

2015/02/05 / Category:Info

嘉衛門 presents Spinning Wheels!
嘉衛門

夜の帳がおりると、街は、その表情を変える。
どの街にもいえることかもしれないが、LAは、とりわけ、その変化が大きい。
太陽がさんさんと降りそそぐストリートを、
色とりどりの車が走り抜けていく。

さり気ない、それでいて、じつに個性的なファッションの若者たちが、
歩道に、くっきりとその影を落としながら、歩いていく。

スクルーバスを降り、母親と手をつなぐ女の子。
大きな犬をつれた老人。
極彩色のウェアで、ジョギングをする中年の女性。

誰もが、太陽の光と、穏やかな気候を、
それぞれのペースで楽しんでいる。

太陽が、西の空の彼方に姿を消してしまうと、
街から、人々の影も消える。
車たちは、みな、シルエットとなり、ヘッドランプやブレーキ・ランプが、
強烈にその存在感を主張しはじめる。

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M.1 JANIS JOPLIN “KOZMIC BLUES”

ローレル・キャニオンとサンセット・ブールヴァードの交差点を左折し、
夜の街を、東に向けて走る。

ジャニスが定宿にしていたあの小さなホテルに、もしも空室があったら、
今夜はあそこに泊まろう。

そのままサンセットを走り、いったんダウンタウンに出る。
そして、ステイプルズ・センターのすぐ近く、

かつて、あのモリスン・ホテルがあったエリアを、これといった理由もなく、
ゆっくりと走り回る。
夜のLAの、いつものルート。まあ、挨拶のようなものだ。

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M.2 THE DOORS “ROADHOUSE BLUES”

嘉衛門 presents Spinning Wheels! Vol.96

2015/01/29 / Category:嘉衛門 presents Spinning Wheels

嘉衛門 presents Spinning Wheels!
嘉衛門

何度かアメリカを旅しているうち、海の近くや、荒野だけではなく、
都市のなかにも、好きな道ができた。
サンフランシスコなら、
ヘイト・ストリートとアシユベリー・ストリートは、もちろんだが、
ユニオン・ストリートとフィルモア・ストリートが交差するあたりもいい。
ジェットコースターのようなスリルが味わえる
フィルバート・ストリートやロンバード・ストリートも忘れられない。

ロサンゼルスなら、やはり、ローレル・キャニオン・ブールヴァード。
街からはすこし離れているが、トパンガ・キャニオン・ブールヴァードもいい。
いずれにしても、ずっと聴きつづけてきた音楽と、
どこかでつながっている道、ということになる。

ローレル・キャニオン・ブールヴァードは、
スタジオ・シティを抜けていくヴェンチュラ・ブールヴァードと
ウェスト・ハリウッドのサンセット・ブールヴァードをつなぐ道だ。
かつては、たくさんのヒッピーや芸術家たちがそのエリアに暮らし、
そこから、いくつもの名曲が生まれた。

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M.1 EAGLES “HOLLYWOOD WALTZ”

太陽が西の方角に沈みはじめたころ、スタジオ・シティから、
ローレル・キャニオン・ブールヴァードに入った。
曲がりくねった細い道が、丘を登り、やがて、下っていく。

この道を走っていると、ときおり、タイムスリップしたような気分になる。
ロードサイドの光景や、そこに建つ家は、おそらく、
1970年前後のあのころと、ほとんど変わっていないのだろう。
サンセット・ブールヴァードに出たとき、街はもう、すっかり暗くなっていた。

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M.2 EAGLES “AFTER THE THRILL IS GONE”

嘉衛門 presents Spinning Wheels! Vol.95

2015/01/22 / Category:嘉衛門 presents Spinning Wheels

嘉衛門 presents Spinning Wheels!
嘉衛門

海岸に沿って伸びる道は、刻々と表情を変えていく。
砂浜に面して、ほぼまっすぐに走りつづけたあと、
大きなカーヴを描いた道は、切り立った崖の上に出る。
急な坂を昇っていくと、ドライヴァーズ・シートと海の標高差が、一気に増す。
岩にあたって砕け散る波が、はるか下に見える。

さらにしばらく走ると、道は、海岸線から少し離れ、
豊かな緑が広がる、丘陵地帯へと入っていく。
緩やかなカーヴと坂の、美しい連なり。
時おり、丘の向こうに、光り輝く海が顔を出す。
どれだけ走っても、あきることのない道だ。

長い坂を下って、ふたたび海岸線に出る。
夕暮れどきの、小さな港町。
もうすぐ、ハーバーライトに灯りがつけられるのだろう。

茜色に染まっていく砂浜に、小さな、古い舟が一つ。
時の流れから取り残されて、そこにたたずむ舟は、
静かに、なにかを語りかけてくる。

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M.1 CROSBY STILLS & NASH “WOODEN SHIPS”

港町から、さらに北に進み、途中で右に曲がる。
丘を昇りきったあたりに、小さな家が点在するそのエリアは、
かつて、芸術家やヒッピーたちが、集まって暮らしたエリアだという。
旧式のヴァンやピックアップが何台か、停まっている。
たしかに古いけれど、何度かペイントし直され、
きちんとケアされてきた、車たちのようだ。

アコースティック・ギターがさり気なく置かれた、ポーチ。
あの時代、きっと、こういう場所で、たくさんの歌が生まれたのだろう。

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M.2 CROSBY STILLS & NASH “YOU DON’T HAVE TO CRY”

嘉衛門 presents Spinning Wheels! Vol.94

2015/01/15 / Category:嘉衛門 presents Spinning Wheels

嘉衛門 presents Spinning Wheels!
嘉衛門

海岸線にそって伸びる道に、車を乗せ、北を目指す。
1時間ほど走ったころ、太陽が、南西の方角に傾きはじめた。
「旅に出てよかった」と思わせてくれる時間が、近づいてきたようだ。
水平線の向こうに太陽が沈みきるまでには、まだ時間がある。
あと30分ぐらいだろう。

砂浜に面した空き地に車を停め、ふたたび、愛用のカメラを手にとる。
かれこれ30年近く、使いつづけてきた、大切なカメラだ。
高いものでも、貴重なものでも、まったくないが、
シャッター速度も、絞りも、フォーカスも、
すべてマニュアルの、このカメラが、

今ではもう、旅には欠かせないものになってしまった。
濃紺から深紅まで、空と海の描く美しいグラデイションが、そのまま、
SUVのボディと、ウィンドウ、ホイールを染めあげていく。
東側に広がる山岳地帯の色も、少し前とは、まったく変わった。
その、それぞれの構図に向けて、一回ずつ、シャッターを切る。

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M.1 THE CORRS “LITTLE WING”

旅のあいだ、フィルムを装填したカメラで風景を撮るときは、
それぞれの構図に対して、一回しか、シャッターを切らない。
もちろん、シャッター速度も、絞りも、頼りは、感覚だけ。

深い理由はないし、なぜ、そんなふうになったのか、わからないけれど、
それが、いつの間にか決まってしまった、旅のルール。
撮れていなくても、かまわない。そういうことなのだろう。

なにかを語りかけてくるような海辺の風が、急に、強さを増した。
そろそろ、先を急ごう。

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M.2 STING “THE WIND CRIES MARY”

嘉衛門 presents Spinning Wheels! Vol.93

2015/01/08 / Category:嘉衛門 presents Spinning Wheels

嘉衛門 presents Spinning Wheels!
嘉衛門

まだ、新しい年が明けたばかりの、海辺の町。
海岸に面した空き地に車を停め、外に出ると、
風は、文字どおり、肌を刺すような、冷たさだった。

まっすぐ、北に向かって伸びていく、白い砂浜。
北東の方角に、雪をかぶった山並みが見える。
周りには、車も、人も、ほとんどいない。

青、というよりは、藍色に近い真冬の海に、
風と波が、幾何学的な模様を描いていく。

おかしな表現かもしれないが、荒涼とした、しかも、美しい風景。
ひさびさにモノクロのフィルムを装填した旧式のカメラを、
その構図に向ける。

レンズは、もちろん、50ミリ。
遠く及ばないことはわかっているけれど、気分だけは、アンセル・アダムスだ。
あの人なら、この、冬の海を、どうやって切りとっただろう?

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M.1 JOHNNY CASH “ONE”

海岸線にそって伸びる道で、北を目指す。
雪をかぶった山並みが、だんだんと、大きくなってくる。
太陽は、南西の方角に傾きはじめた。

あと、ほんの数時間で、きらきらと光る水平線の向こうに、姿を消すはずだ。
こういうときに聴きたくなるのは、
歳を重ねても歌いつづけた人、歌いつづけている人たちの、歌。

そこから伝わってくる年輪のようなものを、
心が、自然に、求めてしまうのかもしれない。

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M.2 WILLIE NELSON with PAULA NELSON

“HAVE YOU EVER SEEN THE RAIN”

嘉衛門 presents Spinning Wheels! Vol.92

2015/01/01 / Category:Info

嘉衛門 presents Spinning Wheels!
嘉衛門

ゆるやかなカーヴを描きながら、丘陵地帯を抜けて行く、
片側一車線の、オールド・ハイウェイ。
たしか、10年ほど前にも、このあたりを旅したはず。

もう少し走れば、稜線の向こうに、海が見えてくるはずだ。
新しい年を迎えたばかりの、朝。

空はきれいに晴れ渡り、雲一つない。
だが、空気の冷たさは、ウィンドウを通して、
ヒーターの効いた車内にも、しっかりと伝わってくる。

風に乗り、気持ちよさそうに空を舞う、一羽の、大きな、白い鳥。
もう、海が近いのかもしれない。

さらにしばらく走って、丘を越えると、
車は、海岸線に向かってまっすぐに伸びる道に出た。

青、というよりは、藍色に近い真冬の海が、
太陽の光を受けて、きらきらと輝いている。

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M.1 BILL FRISELL “SURFER GIRL”

少し前には、青い点のようにしか見えなかった車に、追いつく。
荷台にロングボードを積んだ、ダークブルーのピックアップ。
かなり古いタイプだが、大切に乗られてきた感じが、

うしろ姿からだけでも、伝わってくる。
ウィンカーを出し、制限速度のままで、左側から追い越す。
ハンドルを握っているのは、若い女性だった。
長い髪が、美しく、風に揺れている。
ウィンドウを下ろしてみると、
海辺の風は、文字どおり、肌を刺すような、冷たさだった。

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M.2 BILL FRISELL “TURN, TURN, TURN”

 

嘉衛門 presents Spinning Wheels! Vol.91

2014/12/25 / Category:嘉衛門 presents Spinning Wheels

嘉衛門 presents Spinning Wheels!
嘉衛門

20年ほど前の、ニューヨークで過ごした日々の、最後の日。
JFKで車を返す予定の時刻までには、まだ、たっぷりと時間があった。

ヴィレッジをあとにして、北東に向かってマンハッタンを走る道、
8thアヴェニューに車を乗せた。
これが、とりあえずの最後かと思うと、

はげしい渋滞も、鋭角的なクラクションの音も、気にならない。
かえって、心地よく感じてしまうほどだ。

ウィンドウの向こうの景色がゆっくりと流れていく。
ガラス一枚隔てただけだというのに、歩いているときとはまた違う、
ニューヨークの、独特の感触が伝わってくる。
不思議なものだ。

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M.1 SIMON & GARFUNKEL “SOUND OF SILENCE” 

かつて、ジミ・ヘンドリックスやジョン・レノン、レッド・ツェッペリンなど、
数多くのアーティストたちが愛したスタジオ、レコード・プラントの跡地。
ソングライターを育て、幾多の名曲を送り出したブリル・ビルディング。

マディソン・スクエア・ガーデン。
ギター・ショップが並ぶ、48thストリート。
クラシックな佇まいの、ビーコン・シアター。

思いつくまま、ニューヨークの、音楽の聖地を巡る。
立ち寄るわけでもなく、ただ、その近くを通りすぎるだけ。
それだけなのに、何かが伝わってくる。物語や、歌が、心のなかに浮かんでくる。
不思議な街だ。

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M.2 LCD SOUNDSYSTEM

“NEW YORK, I LOVE YOU BUT YOU YOU’RE BRINGING ME DOWN”

嘉衛門 presents Spinning Wheels! Vol.90

2014/12/18 / Category:嘉衛門 presents Spinning Wheels

嘉衛門 presents Spinning Wheels!
嘉衛門

12月のニューヨーク・シティ。
軽い朝食をとってから、外に出ると、
思わず、立ちすくんでしまうほどの寒さだった。

道路から立ちのぼるスティームが、ひときわ、白く見える。
黄色い車体のタクシーや、小型のトラックが、
その、雲のようにも見えるスティームをかき分けるようにして、
走っていく。

駐車場に行くと、二日前に会った、リーゼントの青年がいた。
小さなブースで、ラジオを聴いている。ジミ・ヘンドリックスだ。

『オン・ザ・ロード』のディーン・モリアーティを彷彿させるその男は、
二日前と同じように、無愛想だったが、
車は、もう、すぐ出せる位置に移されていた。

なかなか、いい仕事だ。

現代のモリアーティが、相棒のサル・パラダイスと
オンボロ車に乗り込み、大陸に向かって旅立っていく姿を、
勝手に、頭のなかに思い描いてみる。

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M.1 JIMI HENDRIX “CROSSTOWN TRAFFIC”

最後にもう一度と思い、8thストリートとセント・マーク・プレイスを
走ってから、ぐるりと回り込むようにして、8thアヴェニューに出る。
激しい渋滞だ。

いくつも車線がある、一方通行の道が、車で埋まっていた。
そのなかで、無理矢理、車線変更しようとする車。

鳴りひびく、クラクション。
いつもながらの、ニューヨークの朝だ。

伝説的な録音スタジオ、レコード・プラントがあったエリアまでは、
それでも、15分もあれば、たどり着けるだろう。

ダウンロード (14)
M.2 JIMI HENDRIX “VOODOO CHILD”

 

 

嘉衛門 presents Spinning Wheels! Vol.89

2014/12/11 / Category:嘉衛門 presents Spinning Wheels

嘉衛門 presents Spinning Wheels!
嘉衛門

ホテルは、ワシントン・スクエアのすぐそばにとった。
狭い部屋の、小さな窓から、紅葉の時季が去り、
すっかり冬の装いとなってしまった広場が見渡せる。

走り回る子供たち。
大きな犬を連れて、散歩する女性。
真ん中のエリアで、なにか、曲芸のようなものを見せている男。
南西の方角の一角には、チェスを楽しむ老人たち。

その周りの道を、さまざまなタイプの車が、ゆっくりと走り過ぎていく。
それは、いつもながらの、ワシントン・スクエアの光景だった。

薄暗くなってから、ふたたび、広場の周辺や、
セント・マークス・プレイスを歩いた。

若き日のボブ・ディランや、無名時代のジミ・ヘンドリックスが、
ギター・ケースを抱えてこのあたりを歩いていたはず。
そう思っただけで、感動のようなものを、覚えてしまう。

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M.1 DAVID BOWIE “FAME”

エレクトリック・レディの前では、何度も、足をとめてしまう。
ジミ・ヘンドリックスが、大きな夢の実現のために建てたスタジオは、
彼が亡くなったあと、文字どおりの聖地となった。

たくさんのアーティストが、なにか特別なヴァイブを受け止めながら、
ここで、素晴らしいレコーディングを残してきた。

たしか、1975年の秋には、
デイヴィッド・ボウイとジョン・レノンが “FAME” を録音している。
その少し前、カリフォルニアから戻ったジョンは、
別のスタジオで “WALLS AND BRIDGES” を仕上げていた。

すごい街だ。
明日は、そのスタジオがあったあたりまで、足を伸ばしみようか。

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M.2 JOHN LENNON “WHATEVER GETS YOU THRU THE NIGHT”