5/1(Thu.)林澄里

2014年5月2日 / Category:Entry

旅音_写真

 林澄里 Sumisato Hayashi

旅にまつわるさまざまな仕事を手がける夫婦ユニット「旅音(たびおと)」として活動中。撮影、執筆のほか、トークイベント出演、ワークショップ講師など、活動は多岐にわたる。著書に『インドホリック』(SPACE SHOWER BOOKS)、『中南米スイッチ』(新紀元社)。近著は編集・撮影を担当した『亀時間』(SPACE SHOWER BOOKS)
http://tabioto.com

 

 

■ 選曲テーマ

旅をしているときにBGMを流すとしたらこんな曲、というものをセレクト。
飛行機に乗ってから、帰国するまでをイメージしたBGMで、1時間の仮想旅行をお楽しみください。

 

 

■ 選曲リスト(曲名/アーティスト名)

M1:747 Dub / 砂原良徳

「羽田空港」や「成田空港」という電車の行き先表示は、ふっと気持ちを旅へと誘ってくれる。乗車すると、これからの旅を思って気分が高揚し、実際に空港に到着すれば、いよいよ出発だなと身が引き締まる思いがする。興奮を抑えつつ飛行機に搭乗。冷静なふりを装いつつ、窓の外に広がる雲海や下界に広がる地形を見ては、絶えず「おぉっ!」と熱狂する。この曲はまさに、飛行機内で過ごしているときの、落ち着いた素振りの中に見え隠れする冷めやらぬ興奮そのものだ。砂原良徳氏の飛行機三部作は、外国から宇宙まで、あちこちに連れていってくれる秀作。

 

M2:Blue Nile / Mulatu Astatke & The Heliocentrics

目的地の空港に着いたら、深夜だった。 入国審査を終えて荷物を受け取り、外に出てみたら、そこにいるのは褐色の肌をした男たち。真夜中だというのに、暑さと湿度で洋服がピタッと肌にまとわりつく。 初めてやってきた国。電車の運行は既に終わっていて、ホテルまでの移動手段はタクシーしかない。男どものギラついた視線に不安を感じつつも、薄明かりの中、タクシーを探して乗り込む。 街は真っ暗だというのに、ところどころ明るく照らされた場所に群がるたくさんの人。彼らはいったい何をしているのだろう?だんだん不安になってくる。でも、ちょっぴり興奮もしている。 タクシーはちゃんと、宿まで連れていってくれるだろうか……。 この曲は、そんな不安と興奮が混ざった感情みたいな一曲。Mulatu Astatke & The Heliocentricsの奏でる音楽から、まだ見ぬエチオピアも、きっとこういう気持ちを強く感じるのだろう、と確信している。

 

M3:AWA / 滞空時間

到着が真夜中だったため、窓の外にどんな景色が広がっているのかわからないまま眠りについた。翌朝、初めて街の様子を知り、整然とした日本を飛び出し、第三世界へやってきたことを実感する。土くさいというか、ほこりっぽい感じがして「ああ、ついに来たんだなあ」と。 夜間の移動は心配事や面倒なことも多い反面、朝になってようやく街の風景と対面できるため、目隠しをして急にパッと手を外したときのような、新鮮な驚きを感じられるのが格別だ。 滞空時間は日本人アーティストだが、バリ島の、ツーリスティックではないローカルな世界へと一瞬で導いてくれる。

 

M4:Un Canto A Mi Tierra / Quantic and his Combo Barbaro

せっかく海外に来たなら、現地の音楽も体験しないと。そう思ってライブに足を運ぶと、そのクオリティの高さに度肝を抜かれる。温度や湿度、匂い、空気など、その場を構成する要素の中に身をおくことで、より楽曲のリアリティが増す。本場で聞く本物の音楽、それは旅の醍醐味のひとつだと思う。 Quanticことウィル・ホランドは、まさに本物を求めてコロンビアに移住し、音楽制作をしているアーティスト。

 

M5:Budismo Tropical / Martin Buscaglia

道を間違えたのか迷ってしまった。最初は心配になって、どうにかわかる場所を見つけなきゃと動き回るうちに、周囲の街並みが目に入るようになってくる。見たこともない植物が植わっていたり、地元の人のやさしさに触れたり、気がつけばウロウロするのが楽しくなっていた。 海外にいてもスマホの地図のおかげで迷わなくなってきたが、それでも迷子になって流れに身を任せることは、旅ならではの楽しみでもある。 南米はウルグアイのCDショップで偶然出会った、Martin Buscagliaが奏でるBudismo Tropical。彼のイメージする東洋への異国情緒を感じる。日本人にとっての当たり前な日常は、外国人の目にはエキゾチックに映るのだ。

 

M6:me gustas / Manu Chao

さまざまな国を旅して感じるのは、とにかくボブ・マーリィは絶大な人気を誇る、ということ。 地域を問わずしょっちゅう耳にしたが、中南米では少々事情が違った。ボブの代わりと言ってもいいほど、よく耳にしたのはManu Chaoだった。 Manu Chaoは中南米を代表するアーティストのひとり。日本人にとって外国語の歌と言えば英語がメイン。英語慣れした耳にスペイン語の響きはとても新鮮で、旅心を刺激してくれる。しかも、あまり知られていないかもしれないが、良質な音楽がたくさんある。

 

M7:Magnolia / J.J Cale

どこまで行っても変わることのない風景を、長距離列車に揺られながらら眺めている。周囲の人とおしゃべりするのも一段落し、思考が停止したかのように、ただひたすら流れる景色に身を任せて。 そんなとき、頭の中に流れる音楽はスティールギターが入った静かな楽曲。ペダルスティールがさり気なく使われているこの曲は、移動中の光景そのもの。

 

M8:Ponta de Areia / Milton Nascimento

長距離移動を経て着いた先は、牧歌的な風景が広がる海沿いの小さな街。 どこからともなく子どもたちの歌声が聞こえてきた。疲れた体にじんわり染み入るその声のおかげで、やさしい気持ちになった。ここに来て、楽園というものがこの世に実在することを知った気になる。 詞の意味とはまるで違う解釈だが、曲のイメージは各人の自由、ということでよしとしよう。

 

M9:Dark Water & Stars / Natural Calamity

海を前にすると、ただ海があればいい、もうそれだけで、という気持ちになる。 朝の海、昼の海、夕方の海、夜の海。どの時間帯であっても、いいものはいい。 この曲は、夕方から暗くなるまでの、楽園のサンセット的海の風景を前にして聞きたい。

 

M10:Indian Night / Halibut

砂浜にセットされたテーブルの上に、火を灯したロウソクが置かれる。海を見ながらお酒を飲む。 永遠にこんな時間が続くような錯覚に陥る、旅先での極上の夜。

 

M11:Guatemala / PEPE CALIFORNIA

最終日の夜。旅を振り返ろうとするも、前半の記憶はすでに過去の懐かしい出来事に変化していることに気付く。もう旅も終わりだ。感慨にふけりながら、グアテマラで出会った映像作家、赤地剛幸さんの”Traveling Denim”を見る。彼と奥さんによる世界一周の旅を記録した作品は、また旅に出たいという感情を呼び起こす。その作品のBGMとして使われているのが、PEPE CALIFORNIAによるこの曲だ。

 

M12:Tokyo / The Books

ただいま日本。 家に戻るまでのわずかな時間、東京を通過する。煌々と照らされた街、寸分の遅れもなく運行する電車、一定のスピードで歩く人々。少し離れていただけでも、この街がいかに特殊かということを思い知らされる。 でも、たくさんの刺激に満ちた魅力ある街、でもある。 旅先から戻ると、異国にやってきたような違和感と刺激を与えてくれる。それが東京。