失敗作の魅力とは
金曜日, 9 月 10th, 2010「砂丘」の製作費は700万ドル。
製作費1億ドル規模の映画が珍しくない現在でこそ、大した額には思えませんが、1970年当時としては超大作でした。
ところが、初公開時の売り上げは90万ドル。
いかんせん惨敗です。
そのうえ、映画評論家の多くからも叩かれる始末。
これがトラウマになったのか、アントニオーニ監督がアメリカで映画を撮ることは二度となかったのですが、この作品、たんなる駄作として片付けられない何かを持っています。
というのも、「砂丘」が失敗した主要な理由は、アントニオーニ監督の野心が大きすぎて、作品の枠にうまく収まらなかったことにあるんですね。
つまりは壮大な空振りをやってしまったのですが、それだけにかえって、野心の大きさが浮き彫りになっている。
実際の映画の背後に、もっと素晴らしいバージョンの「砂丘」が見え隠れするような印象、といったらお分かりいただけるでしょうか。
完璧に仕上がった傑作では、こういう印象は得られません。
巨匠の失敗作が持つ魅力、それはいいかえれば、偉大な監督のクリエイティビティを、むきだしの形で生々しく味わえることにあるのです。
みなさんもスコアを聴きながら、自分自身の「砂丘」を想像してみると、きっと面白いですよ。