Reborn-Art Festival Radio Supported by 木下グループ

6.29 SAT. 第2回放送

パルコキノシタ×小林武史

車を運転してる人が、僕が制作しているのを見ると、
ほぼ100人中100人がガン見して行くんで交通事故には気を使っていただきたい

8月3日土曜日から9月29日日曜日まで、58日間にわたって開催されるReborn-Art Festival 2019。

宮城県の牡鹿半島と石巻市街地を舞台にした、「アート」「音楽」「食」を楽しむことの出来るこのフェスティバル、第2回目の開催となる今回のテーマは「いのちのてざわり」。

各エリアをプロデュースする7組のキュレーターと、40組以上のアーティストが、それぞれのエリアで、地元の人々や土地の記憶に触れ、未来に向けたアート作品を発表します。

番組では毎月、実行委員長および制作委員長を務める音楽プロデューサーの小林武史による、キュレーターやアーティストとの対談模様をオンエア。

第2回目の今夜登場するのは、小林武史がキュレートを担当する桃浦エリアで、作品を発表する現代美術家、パルコキノシタ。

1965年、徳島県生まれ。小学校の教員をしていた頃、「日本グラフィック展パルコ賞受賞」をきっかけに、この呼び名に。90年代、美術教師を経てイラストレーターに転向。現代美術グループ、「昭和40年会」のメンバーになって以降、活動は海外へ。2011年、震災以降は被災地や仮設住宅でのアートを生かしたコミュニティ作りに奔走し、復興支援活動を現在も継続している。2017年の「リボーンアートフェスティバル」をきっかけに宮城県に移住。専門は絵画だが、牡鹿半島を拠点に木彫も始める。スマトラ沖地震最大の被災地、バンダ・アチェでもアート支援活動を始めている。

今回、パルコキノシタがアートで表現する「いのちのてざわり」とは?

今夜、番組内でオンエアする音楽はすべて小林武史がセレクト。「Reborn-Art Festival」の世界観を音楽で表現していきます。


小林「今日はですね、いま車に乗って牡鹿半島を移動中なんですけども。僕の横に乗っているパルコさん自己紹介お願いできますか?」

パルコキノシタ「現代アートの作家やっています、2回目のReborn-Art Festivalに新作を制作するために、今ここにいます、というか移住したんですけどね」

小林「そうでしたよね」

パルコキノシタ「いろんなことが次から次にあって、東京ではできなかったこと、たとえば猟師の免許を取って鹿を捕ったりするようになったのも、こっちに来てからですね」

小林「解体なんかも?」

パルコキノシタ「包丁あれば、なんでも解体できるようになりました」

小林「1回目の時のパルコさんの作品っていうのは?」

パルコキノシタ「あの津波で亡くなられたり行方不明になった方の数、3977人がどれぐらいなのかって可視化するために、1体ずつ木彫りを彫ったっていう」

小林「それは祈りのようなものだったんだけど、今回の作品はまだ途中なんだけど、今見てきまして、大絶賛という言葉でもまだ足りないぐらい、これはすごい。別に俺は褒め殺し人間でも持ち上げるのが上手い人間でも決してないと思っているのだけど、本当に作品が良くて。まだタイトルがついてないんですが、豚ですね?」

パルコキノシタ「豚さんですね」

小林「作品を解説すると、どんな感じですか?」

パルコキノシタ「まず最初に、あの場所は津波の被害があって今ファームなってるところも波が来てるんですよね。亡くなった方もいらっしゃるし、震災が来るまでは147名の方が暮らしてた桃浦という集落で漁業が専門だったんですけど、もうそこは人が住んじゃいけないところになっちゃって、人が0というか本当になくなっちゃったわけなんです。そして僕が気づいたのが、やっぱりそこにはちゃんとお墓もあるし、神社もあって1年に1回お神輿を担いだりする、人々の信仰もちゃんとあったんですけど、震災とともにそういう神様に対する祈りみたいなものも、途絶えてしまったわけなんです。本当に何も無い更地のようになってしまったんですけど、じゃあそこに人がいなくなったから神様もいなくなったのかなっていうところから、今回の作品のスタートがあって、そういった自然災害があって人がいなくなったとしても、そこに神様はいるんですよね」

小林「命はずっと芽吹いたりしてますもんね」

パルコキノシタ「あの震災がいろんなものを奪っていったと言いますけれど、太陽の光から風から土から育ってくる草花、そういったものをひとつひとつ見ると、非常に自然から貰うめぐみの凄さっていうものをどうやったら作品にできるかなと、そして僕が作ったのが大きな豚」

小林「木でできててね、大きいんですよ。実際ここに来て見てほしい、ほんとにすごいトリックがあるというか、全部をラジオで伝えてしまうのは止めます。いいですか? パルコさん」

パルコキノシタ「いいです」

小林「『いのちのてざわり』って僕らのテーマとしてあるんだけれども、牡鹿半島の突端にあるエリア・鮎川は捕鯨の町なんですよ。最近オーストラリアの人たちを中心に世界的にも言われていますが、クジラが可哀想じゃないか、食べちゃいけないだとか、人間の中でルールを決めようとする。でも、ありとあらゆる『いのち』は『いのち』を頂かないと、当然生きていけない。その中でどういう『いのち』をいただくべきかということを、人間が決めようとする風潮が出てきている」

パルコキノシタ「動物、食べたら可哀想とかね」

小林「肉を食べちゃいけないっていう人達もいる。僕もパルコさんも、逆に不自由だなって思っている。何でも食べたいからって言っているのではなくて、なんていうのかな……不自然な感じ」

パルコキノシタ「どこかで線引きをするかということ、線引きをしたその時点でその線引きそのものが人間のエゴになってしまうと、例えば虫にだって心があるわけなんですけど、虫ってそのままほっといたら蚊だって蝿だって人間と戦ってる病気・ウイルスとかの元になったりする虫は殺虫剤とかで倒さないといけないじゃないですか、すべての命を殺すなとなると、その虫を生かさなきゃいけなくなると人類は絶滅してしまうという。自分自身がハンターの免許持っていますが、罪深くもしれない中で動物の命をいただきながら神様に感謝し続けるという生き方をこの石巻の半島で選んだわけなんですね」

小林「パルコさんがいま制作している豚さんは、ユーモアもありますね」

パルコキノシタ「かわいいのがひょっこり出てる、ここにいるの!? みたいな感じ。車を運転してる人が、僕が制作しているのをみると、ほぼ100人中100人がガン見して行くんで交通事故には気を使っていただきたいっていう感じなんですけど」

小林「ガン見した後、いい気分になるのとそうじゃないものあるけど、あれはね、いいですよ、しかもなんだろうな、ほっこりっていうのを超えている」

パルコキノシタ「桃浦の自然の恵みを受けてすくすく育った豚が、さらに一流シェフの店によって最高のメニューになるっていう、なんていうのかな、いのちの流れを可視化できている、それはあまりないんじゃないか」

小林「おもしろいですよね」

パルコキノシタ「寿司屋に行くとお魚が泳いでて、これくださいとか言ったのはありますけども」

小林「それと似てるの?」

パルコキノシタ「いやいや、自然環境の中で我々が食べて生かされていると」

小林「昨日も牡蠣の養殖場にみんなで船に乗って行って、網をグッと引上げて、今の牡蠣の状況こんなんですよと見せてくれて。そこから何個かみんなで食べて、フードディレクターのジェロームがこんなに贅沢なことはないって言ってて、近い領域の中で食べるリアル」

パルコキノシタ「海の底に野生としてあったものを、ほぼ海にいる状態で食べていますもんね、極端な加工が一切されていなくてありのまま自然な状態でたべたものに、1番いのちをもらった感じかあるいうか、感謝の気持ちが湧くというか」

小林「パルコさんの作品もあるエリアで、僕がそのエリアのアートの用務員さんみたいな役割です。どこのエリアでもそうなんですが、最初に我が物顔に見えたのは防潮堤だったんです。防潮堤の内側に、本来は大漁とか安全を祈願していた石碑が立っていて、それが防潮堤に塞がれていて可哀想だなと思ったんですが、むしろ反射してぐるぐる磁場が面白い科学反応を求めて、彷徨って渦を巻いてるんだと考えると、海の向こうに放射されるだけじゃなくて、なんかいろんなものに繋がっていく新しいエネルギーみたいなものに感じられるかもと思ったのが、このエリアのテーマである『リビングスペース』。どんなリビングスペースかっていうと、昔の僕の家っていうわけじゃないけど、架空の茶の間みたいなもの。」

パルコキノシタ「すごいスケールの茶の間ですね」

小林「いろんな人が出入りして、おじいちゃんや孫とか、何かいろいろな虫がちょこちょこ置いていったもので構成されている、そして神棚があったりとか仏壇があったり、普通にそこでご飯が食べられていて、そこでお客さんが寝てたりするリビングスペースというかね」

パルコキノシタ「いろんな人がいるじゃないですか、お金持ちの人もいれば庶民の人も、お年寄りから子供までいろんな人がいる、その中の全ての人を受け入れられるお茶の間、それは大事なとこですね」

小林「日本人の美しさとしてある気がします、懐みたいなものがあったような気がする」

パルコキノシタ「アートって誤解されやすいのがある特定のマニアであったり専門家の人の為だけのものと思われたりすることがたまにあるんですけど、目指すところは違う、全ての人が集まれるような、まさにリビングスペース。いいネーミングですね」


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