Reborn-Art Festival Radio Supported by 木下グループ

7.25 SAT. 第3回放送

豊嶋秀樹×小林武史

鹿に導かれてあちら側の世界をいろいろ見た後に、
もう1回こちら側の自分たちの世界戻ってくるような、構造を取り入れたい

宮城県の牡鹿半島と石巻市街地を舞台に、8月3日土曜日から9月29日日曜日まで、58日間にわたって開催されるReborn-Art Festival 2019。

震災被害を受けた東北の人のみならず、参加する人それぞれの“再生”を願い、アーティストによる現代アートの展示、ライブやオペラなどの多彩な音楽イベント、地域を深く味わえるユニークな食体験など、様々なコンテンツが予定されています。

第2回目の開催となる今回のテーマは「いのちのてざわり」。

各エリアをプロデュースする7組のキュレーターと、40組以上のアーティストが、それぞれのエリアで地元の人々や土地の記憶に触れ、未来に向けたアート作品を発表します。

番組では毎月、実行委員長および制作委員長を務める音楽プロデューサーの小林武史による、キュレーターやアーティストとの対談模様をオンエア。

第3回目に登場したのは小積エリアのキュレーター豊嶋秀樹。

1971年、大阪府生まれ。大阪を拠点にクリエイティブ活動を展開する会社、grafの設立メンバーの一人で、2009年9月以降は、gm projectsとしてジャンルを問わず幅広く活動。「あいちトリエンナーレ」「金沢21世紀美術館」での個展をはじめ、作品制作、展覧会企画、空間構成、ワークショップなど幅広いアプローチで活動しているアーティスト。

今回は、小積エリアにある鹿肉処理場を取り巻くように、アーティストたちによる小さな集落が出現。牡鹿半島の象徴的存在としての、「鹿」に導かれ、自然界側の物語から見える世界をめぐる、アートを表現します。

豊嶋秀樹がアートで表現する「いのちのてざわり」とは?

番組内でオンエアした音楽はすべて小林武史がセレクト。「Reborn-Art Festival」の世界観を音楽で表現します。


小林「今回のReborn-Art Festivalは、複数のキュレーターで構成しているというのは、前回お伝えした通りなのですが、今日は小積エリアのキュレーター豊嶋秀樹さんをご紹介したいと思います。本当にむちゃくちゃ焼けてますけど、雪山焼けですか?」

豊嶋「そうですね、雪山スキー焼けですね。」

小林「僕らはしょっちゅう会っている感じではなかったんだけど、最初に出会ってからは、かれこれ15年ぐらいですかね。僕がやっているプロジェクト「kurkku(クルック)」の名付け親は豊嶋君みたいな感じで。元々大阪でgrafをやっていて……grafを説明するとどんな感じ?」

豊嶋「当時はクリエイティブユニットとか、デザインユニットみたいに言われてましたけど、生活っていうものを舞台にいろんなもの作り・クリエイティブをしていこうっていう」

小林「いわゆる家具とか食とかデザインがあって、豊嶋君はそのなかでもアートを?」

豊嶋「そうですね、アート&カルチャーみたいなかんじです」

小林「そしてそこを離れて、その後どうしてるんだろうーー風のウワサで自然の中に入ってる、山に行ってる、そして日焼けてして帰って来ている(笑)。牡鹿半島には海があり、リアス式海岸で、そこに震災が起こり津波があったので、もちろん海のイメージが強いですが、実は牡鹿の鹿とも言われ、山のエリアもすごくあって、僕らの仲間に小野寺望という猟師もいまして。今回彼が影でフードまわりを仕切っていく人なんだけど、小野寺君と豊嶋君がなんか合うんじゃないかな、という感があって、小積エリアにお連れしたところトントンと話が進み、小積エリアのキュレーターを引き受けてくれることになったのですが、どうでした小積エリアは?」

豊嶋「小林さんに『とりあえず小野寺っていう男に会って欲しいんだよね』から始まり、それで僕自身は牡鹿半島そのものにも行ったもことなかったし、何を隠そう前回のReborn-Art Festivalも見ていない状態の中で、入り口として小野寺さんを紹介していただいて、なので小野寺さんが僕にとってのReborn-Art Festivalの入り口みたいな感じだったんですね。小林さんと小野寺さんが一緒にいつも行っている山を歩きながら、実際にいろんな牡鹿半島のことであるとか鹿猟のことであるとか、自然のことであるとか、そういう話を色々していただく中で、僕もこういう場所なのかという土地感覚みたいなものを話を聞いてる中で感じました。そして、山を下りてきて鹿肉処理場の施設があるんですけれども、そこには素敵なキッチンもあって、それは前回のReborn-Art Festivalの時に作ったものなんですよね。そこの管理運営をされているのが小野寺さんで、山を降りてきた後に実は本当に上物の鹿肉あるんだよって話になり、それをちょっと食べませんか? ということになり」

小林「豊嶋君は基本的に、肉・魚を食べない菜食主義な人で、どうするんだろうと思ったら」

豊嶋「せっかくなので、じゃあ少しいただきますみたいな感じで食べてみたら、まぁ非常に美味しくて、美味しいなぁと思ったんです。その時は全然良かったんですけど、その後なんか数日間・数週間、ずっと体の中に鹿がいるような気持ちになって、それは単に胃腸への負担が大きかったのかわかんないんですけど、ぼーっとしてて気がついたら、また鹿のこと考えてたみたいな、そういうような気分になることもあって、これは今回、小野寺さんが鹿撃ちの猟師さんであったりとか、前回のReborn-Art Festivalの時の名和さんの鹿の彫刻を見せてもらったり、鹿・鹿・鹿・鹿・鹿みたいな感じだったんですね、そういう自分の鹿に憑かれた感覚っていう、そういう個人的な体験も踏まえて、小林さんに鹿からみた世界観をテーマにするのはどうでしょうかっていう話をしたと思います」

小林「しばらくしてコンセプトが出てきたんですが、それはどういうものだったんでしょうか?」

豊嶋「エリアテーマのタイトル・副題みたいなのあるんですが、『鹿に導かれ、私たちを見るとき』にしたんですけど、それはどういうことかと言いますと、牡鹿半島にはもちろんそこに住む人たちがいて、そこで働く人たちがいたり、その中で小野寺さんという人も鹿を撃つっていう、そういう人間側の社会から牡鹿半島に関わりを持っているんですけれども、今回僕はそこで出会ったいろんな鹿も鹿なりの世界っていうものがそこにあるんだろうというのを感じて、僕達が見た時の震災っていうこともあったり人間世界から見た牡鹿半島と同時に、鹿たちの目線から見た時の牡鹿半島の世界観というのもきっとあるんだろうと思って、その時にじゃあ今回の展覧会、小積エリアに関しては、鹿に導かれてあちら側の世界に一旦入って、あちら側の世界をいろいろ見た後に、もう1回こちら側の自分たちの世界戻ってくるような、そういう構造を取り入れたいなと思い、鹿が道先案内役として、あちらの世界に僕達を連れてってくれて、そしてまたこちらに帰ってきて、自分たちの世界をもう一度見直すっていうか、そういうものになればいいなっていうコンセプトになりました」

小林「これは本当にすごく面白いし、なんて言うんだろうーーこの半島の端っこに行くと、鹿を神として見ているところもあるし、鹿っていわゆる普通の動物なのだけれど、人間が与かり知らない関係性をいろんな角度から問い直してみるだけでも、この地域であったり日本であったり、動物だったり、生きてるってことを揺すってみるということに繋がっていくのだろうと思ってました。昨年夏「TRANSIT! Reborn-Art」で、今回のフードディレクターでもあるジェローム・ワーグたちと一緒に鹿を解体して、地面に穴を掘ってそこで蒸し焼きにして、みんなで食べるという丸1日かけたイベントをやったんです。その時、小野寺君から「小林さん、やってみなよ」ってナイフを渡されて、生まれて初めて鹿の皮を剥いでいったの。その体験が本当にすごくて。毛皮がついたままの鹿を、名和晃平君の作品「White Deer (Oshika)」のところまで担いでいって、“これから命をいただきます”という気持ちになるけれど、僕らが与かり知らない世界からやってきた鹿なんですよね。それを食べるために、僕らは皮を剥いで、塩を塗ったり、麻布に包んで蒸し焼きにして。皮を剥いだ瞬間から食材になって、それを解体していくと普通にスーパーマーケットやお肉屋さんに並ぶーーまぁ鹿はあんまり並んでないですけど。その境界線みたいなものを跨ごうとすると、すごい神聖な気持ちになるんですよね。「バーベキューをやって、美味しそう」とはちょっと違う。命をいただいている。自分たちが生き残るためには、その作業をずっとやっていかなくちゃいけないし、おそらく“生きる”という本質から行ってきた営み、当たり前だけど、いまお腹を満たしても、1か月後~1年後もずっと生きるために続いていくし、そういった繋がりのことを思うと、命との関係ってすごいものだなって思うんですよね。鹿の皮を剥いだときに、どこかで合理的に僕らが勝手に僕らの都合だけでは考えきれないというか、そういうものを感じました」

豊嶋「今回、実際にアーティスト、何名かに声かけて集まってもらってるんですけれども、そのうちの何人か紹介させていただきます。最初に坂本大三郎さんと大久保裕子さん。これはユニットみたいな形で今回特別に組み合わせて参加してもらうんですけども、彼らには2つのことをお願いしてて、1つ目がパフォーマンス作品の制作・講演。もう1つは展示作品をやっていただくんですけど、面白いのが坂本大三郎さんは山伏なんですね。彼の事は昔から知ってたんですけど、昔はイラストレーターとかデザイナーの仕事をされててその時代に一緒に仕事してたんですよ。その時、大三郎君と呼んでたんですが、大三郎君が雑誌で山伏の格好してるのがあって、あれ? と思って電話してみたんですよ。大三郎君、今山伏なの? って聞いたら、そうなんですよって。それはどういうことかというと、彼自身は個人の興味としてずっとそういう民族学的なことも興味があったし、そういう文化史的なことに興味もあったけれども、何かその山伏っていうのも最初ちょっと軽い気持ちでやってみたらしいんですね。そしたら、山伏っていうのは実はものすごく日本の中の宗教的存在とした仏教とか神道よりもっと以前からいた人たちで、芸能っていうものの起源にすごく近いところにいた人たちだと。それに自分はすごい強い影響を受けて山伏のことを学んでいって、自分なりの解釈をしてやってるんですけれども、アート活動の時には、山伏の役割として新しい現代の芸能みたいなものを、ひとつカタチにしたいっていう希望があるってことだったので、ダンサーの大久保さん、大久保さんはバレエから始めてるような人なので本当のダンサーって感じなんですけれども、彼らが組むことによって現代的な新しい芸能の始まりみたいなものを実験的にやりたいということで、以前にも北海道の札幌で一緒に作ったこともあって、僕もキュレーターとして、その時は音楽家の蓮沼執太さんとかフォーサイス・カンパニーのダンサーの島地さんとかも一緒になって行ったんですけど、それはすごく新しいことが始まったみたいな感じが、ちょっとあったんですね。それを、またどっかの機会でできたらいいなって話だけしてたんです。それは今回じゃないか!! ってすごく思ったので再演という形じゃなくって、今回のReborn-Art Festivalに合わせて、その後の展開みたいな形で新しい作品として作ってもらうことになっています。
次に写真家で津田直さん。彼は世界中いろんなとこを旅しながら写真作品を作ってるんですけれども、その土地土地の物語・歴史それから民族、そういったものについて深くリサーチしながら、写真を撮りためてってるんですけれども、彼の作品のシリーズでエリナスの森というのがありまして、それはエストニアの伝説で9つ角を持つシカの伝説っていうのがあって、それは伝説なので9つの角の鹿の写真を撮ったわけじゃないですけど、その話をいろんな人に聞きまわっていく。聞きまわっていくリサーチの物語を写真に撮っていて、エストニアの鹿伝説っていうのと、もしかしたら牡鹿半島の鹿、金華山の神格化された鹿、それぞれの物語が、全然離れたところが鹿で繋がるというのもいいんじゃないかっていう気持ちもあって、その作品を中心に新作も含めて展示してみてはどうかっていう話をしています。 それから、堀場由美子さんは、元々工芸的なバックグラウンドを持ってる人で、今でもアクセサリーとかも作る人なんですけれども、同時に彼女は自然の中に分け入って、そこで見つけた鹿の骨とか角とか、それから北海道の方ではクジラの骨とか見つけて、そういう骨に先住民族がやるように彫刻をおこなったり、そういったことで作品作ってるんですけれども、 彼女も今回、鹿猟の人達について行って、毛皮を分けてもらったりしながら、何か考えて作ってるらしいという情報は入ってるんです。
最後にちょっと付け加えたいのが、さっきから名前出ているその猟師の小野寺さん。小野寺さんのことも何か伝えれるような場を作れたらいいなってずっと思ってたんですけれども、同時に写真家の在本彌生さんっていう方がいるんですけれども、彼女と組んでもらうことでなにか2人の中で猟に関すること、牡鹿半島に関すること、それかその先にあるような自然のことを、そういったものを1つのコラボレーションの作品として提示できないかっていうことで、2人で作品を作るという新しいユニット誕生っていうか、まあそれも非常に興味深いんじゃないかと思っています」

小林「なるほど」

豊嶋「まさに今回、小積エリアでは鹿に導かれて、その案内役として鹿をたててるんですけど、なんか僕ずっとアートに関わっていてアーティスト達って、実はそういう人たちじゃないかって思っていて、それは音楽家もそうかもしれないし、料理人もそうかもしれないんですけど、なんかちょっと日常、僕たちが普段いる日常的なこちら側の世界から、あちら側に連れてってくれるって言うか、なんかそういうシャーマンと言いますか、なにかそういった人たちじゃないかと思ってて、なのでアート作品っていうのはこっちに属していないという気持ちが僕にはあって、あっちに属してるものをアーティスト達が引っ張り出してきて、こっちに置いてるというか、なんかそういうイメージがあるんですけれどもそういう感じを今回は鹿に導かれて、表せていくとアートとの関わり方っていうのも、またちょっと違うふうに見えてくるんじゃないかなって思ってるんです」

SONG LIST

  1. The Rolling Stones - Sympathy For The Devil
  2. Primal Scream - Jailbird
  3. Miles Davis, Gil Evans - Miles Ahead
  4. 山下達郎 - WINDY LADY
  5. Stevie Wonder - Summer Soft

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