Reborn-Art Festival Radio Supported by 木下グループ

8.3 SAT. 第4回放送

村田朋泰×小林武史

死生観とか祖先との対話、それを記録して受け継いでいかないといけない、
Reborn-Art Festivalはまさにそういうところだなと思ってるんです。

宮城県の牡鹿半島と石巻市街地を舞台に、8月3日土曜日から9月29日日曜日まで、58日間にわたって開催されるReborn-Art Festival 2019。

震災被害を受けた東北の人のみならず、参加する人それぞれの“再生”を願い、アーティストによる現代アートの展示、ライブやオペラなどの多彩な音楽イベント、地域を深く味わえるユニークな食体験など、様々なコンテンツが予定されています。

第2回目の開催となる今回のテーマは「いのちのてざわり」。

各エリアをプロデュースする7組のキュレーターと、40組以上のアーティストが、それぞれのエリアで地元の人々や土地の記憶に触れ、未来に向けたアート作品を発表します。

番組では毎月、実行委員長および制作委員長を務める音楽プロデューサーの小林武史による、キュレーターやアーティストとの対談模様をオンエア。

第4回目に登場したのは、小林武史がキュレーターを担当する桃浦エリアで映像作品を発表する村田朋泰。

1974年、東京出身。東京芸術大学修士課程美修了後、コマ撮りアニメーション制作会社TMCを設立。言葉やセリフを排し、仕草や佇まいによる演出で心情を表現。光の陰影や雨風の移ろう風景を巧みに織り込み、「不在」「喪失」「記憶」「死生観」を題材とした作品発表。日本人のアイデンティティを探る制作をしている。代表作として、「睡蓮の人」「松が枝を結び」Mr.Children「HERO」のミュージックビデオ、Eテレプチプチ・アニメの「森のレシオ」も手がけている映像クリエイター。

村田朋泰がアートで表現する「いのちのてざわり」とは?

番組内でオンエアした音楽はすべて小林武史がセレクト。「Reborn-Art Festival」の世界観を音楽で表現します。


小林「今、僕は石巻市の旧荻浜小学校に来ています。石巻市と言ってもですね、市街地から車で20分程かかる牡鹿半島という自然豊かな場所にいます。この小学校は震災の時は避難所にもなっていました。炊き出しを受け入れ、たくさんの命を救った場所でもあります。残念ながら1年前に廃校になってしまいましたが、これからこの場所をどう活かしていこうかと話し合われているところで、今回いくつかの作品を展示させてもらっています。今日ここ(旧荻浜小学校)にお迎えしているのは、映像作家の村田朋泰さんです」

村田「よろしくお願いします」

小林「『朋泰さんです』と紹介していますが、僕と村田君とは15年ぐらい前に縁があってですね。Mr.Children『HERO』という曲がありまして、そのミュージッククリップは彼らの作品の中でも名作と言われているものなのですが、実は村田君が若い時にコマ撮りで撮影して作ってくれたものなのです。それ以来、何か機会があれば一緒に仕事をしたいと思っていたところに、震災を経て、僕がReborn-Art Festivalをやっていることを聞きつけてくれて、今回参加してくれることになりました。
桃浦エリアのテーマである『リビングスペース』では、いろいろな次元の人との出会いがある場所にしたくて。震災後に村田君も牡鹿半島に来ていて、その時に感じたり化学反応したものを、“旅のお土産”ではないけれど何かを持ってきてくれるようなイメージで、今回旧荻浜小学校に2つの作品を展示してくれています。村田君、解説をお願いできますか?」

村田「僕は教室を2つ使わし→せてもらって、1階で展示してるんですけど、両方とも雨や雷とか光と影といったものをミニチュアで制作して、俯瞰して時の流れとか移ろいというものをボーっと見てもいいんですけど、自分の思いを重ねながら見てもらえるような作品になるといいかなと思って2つの作品を展示してます。『脳舞台』(※)のインスタレーション作品は、ミニチュアで『脳舞台』を制作して真ん中に富士山のような山が配置されていて、上から雨が降ったり、太陽が登って落ちていくその光と影の移ろいを表現しています。もともとこの作品を作るきっかけになったのが『祈る』ということ、日本人にとって『祈る』ってことがどういうことなのか考えるようになったんです。そこから昔の日本がどういう祈りを込めていたのかを探すようになったんです。作品のタイトルも万葉集のひとつから取っています。その歌は神の山・富士山の加護を得るために祈って、旅の無事を願う歌なんですけど、山が祈りの対象になってるんだなって、日本には各地に山々があるので山をモチーフにするのがいいかなと思いました。
もうひとつの『White Forest of Omens』という白い森の作品なんですが、それは半透明な木を400本ぐらい制作して、その1本1本にLEDを仕込んでいます。Omenというのは予兆って意味なんですけど、例えば雨が降り始める前、空に雷と音が鳴るとか、雷が落ちた時に光る森を時間の流れと合わせて演出できないかと思っていて、その予兆というのは、日本は天変地異が多いので、例えば火山だったり地震だったり台風、そういった天変地異の予兆の中で日本人が生活していて、その被害とその裏には恩恵もあったりして、そういう中で生きてるっていう姿のひとつの断片を描けないかなと思って制作しました。今回は森の中にiPadをかざすことで森の中に住む動物達を見つけるというか発見するというか、動物たちが森を歩いていたり、動物同士が共存しているというか、そういうところを見つけたりする楽しみ方も用意してるんで見ていただけたらなと思います」


村田「小林さんとお会いしたのは、2002年で大学を出た17年前なんです」

小林「もう17年前か」

村田「その時、僕が作った人形のアニメーションをご覧いただいて、それからMr.Childrenのミュージッククリップをやってくれないかっていうお話で、すごい選択っていうかすごい話だなと思ったんです。僕は大学を出たばかりだったので、小林さんにとって僕が何者なのかわからないのに、作品から受ける感受性というか、そういうもので繋がることができたので、そこからのご縁で作品制作をさせてもらっています。ミニチュアのセットを作って関節の入った人形をコマ撮りしてるアニメーションと空間を演出する美術館で展示した作品制作を並行して行ってたんですけど、2002年の小林さんとの出会いはすごく僕の人生の中で大きかったので、今回は出しきれる力を出したいというのがあって、正式に2つなんですけど、もう1つ過去に作ったものも展示してもらったりしています。ミニチェアをベースにするのは、例えば博物館とか資料館とか行く時に、ミニチュアのセットがあって例えば縄文のセットとか、そういうものを僕は上から俯瞰して見るといろんなことを考えさせてくれるというか客観的に今の世界とその当時の世界とかそういうものを冷静にゆっくり眺めれる、そういうものなんだなと思ってジオラマとかミニチュア見るの好きなんですけど、僕がやってる行為もそれに似てて、基本はミニチュアの中に山を配置したり森を配置したりしてるんですけど、やっぱり太古の祈りに対して、人は身近に感じる、もしくは身近に守ってもらいたいというところで、いろんなものを小さくするっていう習慣というか風習があるような感じがしてて、そこら辺をなぞっているところもあります」

小林「村田君の作品には死生観とか喪失、あとは切なさが同居しているものが多い、まさに『HERO』のミュージッククリップはそういうものですけど、それはどういうところから、もしくは何を目指してるのかってあります?」

村田「Mr.Childrenの ミュージッククリップを 作った時は学生→大学を出たばっかりだったんですけど、ひとつは僕が一卵性の双子ということもあったりして、もうひとつの自分というのと、こちら側の世界と向こう側の世界っていうところ、例えばあの世とこの世、二極化したところ、何て言うんだろうな、死生観に敏感だったいうのはありますね。震災後に多くの方々が亡くなった時に、冥福をお祈りするって言葉あるんですけど、僕が冥福を祈るってことがわからずに手を合わせて祈るという行為をしていてたんですけど、それは多くの方がしてると思うんですけど、その時に本当に祈るって、日本人にとっての祈る姿勢というか姿はどうなんだろう、なんだろうなっていうところから、より死生観とかもしくは祖先との対話っていうか、またそれをやっぱり記録していかないといけないと思うんです。受け継いでいかないといけないし、Reborn-Art Festivalはまさにそういうところだなと思ってるんです。そういうことを自分がアニメーション、もしくはインスタレーション作品に使って語り継いでいくひとつの装置みたいなものになっていけないかなっていうのはありますね。今は、死生観がどういう答えなのかっていうのは、まだ模索中というか旅の途中って感じなんですけど、そこら辺はすごく大事なテーマとなって、祈りを含めて大事なテーマだなと思っています」

小林「死生観の中に、生と死があって、その循環とは『生きること』なのだろうと思います。我々は、“いったん死んでいく”というように思うのだけれど、実は俯瞰で見ると、ずっと生と死の連鎖だから、僕らは『Reborn-Art=生きる技』、生と死を連鎖していくという『Reborn』なんですよね。単に蘇生するということではなく。都市の文明・文化は、“光をどんどん当ててピカピカするもの”という方向に行きがちなのだけれど、その実態って影の場所のほうが量感や質感がわかったりすることってありますよね。桃浦エリアの集落には、夕暮れで陽が落ちてきたときに、カンカン照りの時にはわからなかった量感や質感があって、影と共に命って存在してるんだっていうのは、すごく思うところですね。それも光があってのことなのでしょうけどね」

村田「この小学校に来たときも思ったんですけど、佇まいがひっそりと木々に囲まれて、ひっそりと佇んでるっていう、その場所が独特で何か細やかな教育って言うんですかね、そういうことが育まれてきたのかな、湿気が多いっていうもの、小学校の歴史のひとつ組み込まれてるっていうか、もともと湿気のことは全然考えてなかったんですけど、この土地に来たことで感じる体験だったなと思ってて」

小林「これからいろいろな人がここへ来るたびに影響を受けて、村田君も旅を続けて、更にこの場所が3回目、4回目を目指していく中で、また寅さんのように現れて、循環が起こっていくといいなと思っています」

※『脳舞台』…今回の村田朋泰作品のひとつ
https://www.reborn-art-fes.jp/artist/tomoyasumurata

SONG LIST

  1. David Bowie - Heroes
  2. Pink Floyd - Summer '68
  3. モーリス・ラヴェル - 亡き王女のためのパヴァーヌ
  4. Oasis - Champagne Supernova
  5. Radiohead - Everything In Its Right Place

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