【2025年12月21日】最新海外FX投資ニュース

皆さま、おはようございます。FX編集部の田中です。

本日は土曜日で市場はお休みですが、昨日12月20日(金)のNY市場終値が週末時点での最新情報となります。

昨日の海外市場は、日銀利上げ後も円安が止まらないという衝撃的な展開となりました。ドル円は157円台後半まで下落し、ユーロ円とポンド円は史上最高値を更新。片山財務相が為替介入を強く示唆する発言をしましたが、市場の円売りは収まりませんでした。

一方、米国株式市場ではAI関連株への買い戻しでダウが続伸。ただし、ナイキが10%超の急落となり、セクター間の明暗が分かれる展開となりました。

来週はクリスマス休暇で薄商いとなるため、通常以上に値動きが荒くなる可能性があります。本日も重要なポイントを分かりやすくお届けしますので、週末のポジション確認にお役立てください。


目次

本日の重要ニュース

利上げでも円安加速!ドル円157円台後半、史上最高値更新ラッシュ

 日銀が30年ぶりの利上げを実施したにもかかわらず、植田総裁の慎重姿勢で円安が加速し、ドル円は157.53円、ユーロ円・ポンド円は史上最高値を更新しました。


12月19日NY市場終了時点で、ドル円は前日比1.23%の大幅円安となる157.535円で週の取引を終えました。一時157.67円まで下落し、約1ヶ月ぶりの円安水準を記録しました。

日銀は18-19日の金融政策決定会合で政策金利を0.5%から0.75%へ引き上げることを全員一致で決定しました。これは1995年9月以来、30年ぶりの高水準となります。

しかし、会合後の記者会見で植田和男総裁が「実質金利は極めて低い水準にある」と述べつつも、次回の利上げ時期やペースについて明言を避けたことが市場の失望を招きました。総裁は「政策金利の先行きのパスは今後の情報やデータ次第」と繰り返し、慎重な姿勢を強調しました。

この結果、「日銀の追加利上げは当分先」との見方が市場に広がり、円売りが一気に加速する形となりました。通常、利上げは通貨高要因となるはずですが、「これから何回利上げするか」という将来の見通しが重視され、まさに「Buy the rumor, sell the fact(噂で買って、事実で売る)」の逆パターンとなりました。

さらに衝撃的だったのは、クロス円が軒並み史上最高値を更新したことです:

  • ユーロ円: 184.71円(史上最高値更新)
  • ポンド円: 一時210.96円(2008年以来17年ぶりの高値)
  • スイスフラン円: 197.23円(史上最高値更新)

片山財務相は19日の記者会見で「一方向で急激な動きがこの半日、この数時間明らかにあるので憂慮している」と述べ、「行き過ぎた動きには適切に対応する」と為替介入を強く示唆しました。しかし、市場の反応は極めて限定的で、円売りの勢いは衰えませんでした。

市場関係者の間では「日米金利差はなお3%以上あり、円キャリー取引(低金利の円を借りて高金利の外貨で運用する取引)が再燃している」との見方が広がっています。実際、ヘッジファンド等の投機筋が円ショート(円売り)ポジションを積み増している可能性が指摘されています。

週末を前に円安ポジションが膨らんでおり、来週のクリスマス休暇期間中は流動性が低下するため、さらに大きな値動きとなるリスクが警戒されています。

市場では、過去の為替介入水準(2024年は160円台で実施)に近づいていることから、来週の動向次第では実際の介入実施の可能性も高まっています。


NY株続伸、ダウ183ドル高もナイキ急落で明暗

 NY株式市場はAI関連株の買い戻しでダウが183ドル高と続伸しましたが、ナイキが決算失望で10%超急落し、セクター間の二極化が鮮明になりました。


12月19日のNY株式市場で、ダウ工業株30種平均は前日比183.04ドル(0.38%)高の48,134.89ドルで2日連続の続伸となりました。ダウの上げ幅は取引時間中に一時330ドルを超える場面もあり、底堅い動きを見せました。

市場を牽引したのはAI関連株への買い戻しです。前週から今週半ばにかけてAI関連事業の先行き不透明感から売られていたハイテク株に、再び買いが入りました。

具体的には、半導体大手のエヌビディアが4%超上昇しました。背景には、トランプ次期政権がAI半導体「H200」の対中輸出審査を開始したとのロイター通信の報道があります。承認されればエヌビディアの収益拡大につながるとの期待が高まりました。

また、インテルも上昇しました。エヌビディアが9月に発表した50億ドル規模のインテルへの出資案を米連邦取引委員会(FTC)が18日に承認したことが材料視されました。インテルの業績回復への追い風になるとの見方があります。

オラクルも上昇しました。中国発の動画共有アプリ「TikTok」の米国事業について、運営企業がオラクルを含む米企業との合併企業設立に合意したと18日に明らかになり、好材料として受け止められました。

17日夕に発表された半導体メモリー大手マイクロン・テクノロジーの決算が好調だったことも、AI関連需要が根強いとの見方を広げる要因となりました。市場では「AI関連需要が当面、底堅さを保つことが確認され、ハイテク株に買い直しが入りやすくなっている」との声が聞かれました。

ハイテク株比率が高いナスダック総合株価指数は前日比301.259ポイント(1.30%)高の23,307.620と大幅続伸しました。

一方、消費関連セクターでは大きな下落が見られました。

スポーツ用品大手のナイキは10.5%急落しました。18日夕に発表した2025年9-11月期決算では、売上高と1株利益が市場予想を上回りました。主力の北米部門は堅調だったものの、中国などの売上高が市場予想に届きませんでした。さらに、2025年12月-2026年2月期の収益見通しも市場予想を下回り、大量の売りが出ました。

冷凍フライドポテトのサプライヤーであるラム・ウェストンは通期の需要見通しが弱いと示唆し、26.0%急落しました。肉スナックで知られる食品メーカーのコナグラも弱い決算を受けて2.5%下落しました。

消費関連株の弱さは、個人消費の先行きに対する市場の警戒感を示しています。FRBが利下げペースを減速させる中、消費者のマインド冷え込みが懸念材料となっています。

また、この日は「トリプル・ウィッチング」(株式オプション、株価指数先物、株価指数オプションが同時に決済期日を迎える日)でした。NY証券取引所の合算出来高は246億株と、直近20営業日平均の171億9,000万株を大きく上回り、需給面での変動が見られました。

アナリストは、オプションの期限切れによりクリスマス休暇明けの相場が価格変動の影響を受けやすくなる可能性があると警告しています。


金価格、2日連続で史上最高値更新

NY商品市場で金先物が2日連続で史上最高値を更新し、1オンス4,387.30ドルとなり、週間では1.36%上昇しました。


12月19日のニューヨーク商品取引所(COMEX)で、金先物の中心限月2026年2月物は前日比22.80ドル(0.52%)高の4,387.30ドルで取引を終えました。

中心限月の清算値(終値に相当)ベースで2日連続の史上最高値更新となり、金価格の上昇トレンドが継続していることを示しました。週間ベースでは1.36%上昇となりました。

金価格を押し上げている要因は複数あります。

第一に、FRBの追加利下げ観測です。FRBは12月に3会合連続の利下げを決定しましたが、2026年も緩やかながら利下げを継続するとの見方があり、金利のつかない金にとっては追い風となっています。

第二に、地政学リスクの継続です。中東情勢の不透明感が根強く残っており、安全資産としての金への需要が衰えていません。

第三に、中央銀行による金購入の継続です。特に新興国の中央銀行が外貨準備の多様化の一環として金を購入し続けており、構造的な需要が価格を下支えしています。

第四に、長期的なインフレヘッジ需要です。各国の財政拡大や構造的なインフレ圧力を背景に、資産保全の手段として金が選好されています。

興味深いのは、通常ドル高は金価格にとってマイナス要因となるはずですが、現在はドル高と金高が同時に進行している点です。これは、市場の不透明感が非常に強いことを示唆しています。

ゴールドマン・サックスは12月18日に発表したレポートで、2026年12月までに金価格が14%上昇し、1オンス4,900ドルに達するとの予想を維持しています。同社は利下げ継続と中央銀行の購入増加を主な上昇要因として挙げています。

現在の水準から4,900ドルまでは約11%の上昇余地があることになり、金投資家にとっては引き続き強気の見通しが示されています。

一方、原油先物(WTI)1月物は前日比0.51ドル(0.91%)高の56.66ドルで終了しました。ベネズエラ産原油の供給混乱が警戒される中、持ち高調整目的の買いに支えられ、3営業日続伸しました。ただし、週間では1.36%安となっており、原油市場の基調は弱含みです。

ゴールドマン・サックスは原油については、世界的な増産や需要減速により下落傾向が続くとの見方を示しており、金との対照的な動きが2026年も継続すると予想しています。

商品市場では、金の上昇と原油の低迷という二極化が鮮明になっており、投資家はリスクヘッジとしての金の重要性を再認識しています。


米国債利回り上昇、日銀利上げが世界債券市場に波及

 日銀の利上げと植田総裁の発言を受けて世界の債券市場で売りが広がり、米10年債利回りは4.151%へ上昇しました。


12月19日のNY債券市場で、米国債利回りが世界の債券利回りと連動して上昇しました。

米10年債利回りは前日比3.5ベーシスポイント(bp)上昇の4.151%となりました。米2年債利回りも2.6bp上昇し3.486%となりました。2年債と10年債の利回り格差は約0.5bp拡大し66.4bpとなっています。

マニュライフ・インベストメント・マネジメントの米金利責任者マイケル・ロリツィオ氏は「日本の利上げとそれに伴う一部の発言が、世界の先進国国債市場の売りをいくらか引き起こした可能性がある」と分析しています。

日銀の政策金利引き上げにより、理論的には日米金利差が縮小するはずですが、植田総裁が追加利上げに慎重な姿勢を示したことで、市場は「日米金利差の縮小ペースは緩やか」と判断しました。

現在の日米金利差は政策金利ベースで約2.75%(米国3.5-3.75%、日本0.75%)ですが、10年債利回りベースでは約2.1%(米国4.151%、日本約2.0%)となっています。

ただし、市場の最大の関心は、米国の労働市場が弱まる中で、FRBが2026年にいつ何回利下げを行うかという点にあります。

フェデラルファンド金利先物トレーダーの予想によると:

  • 2026年1月FOMC(1月28-29日)での利下げ確率: わずか22%
  • 2026年3月FOMCでの利下げ確率: 60%

市場は1月の利下げは見込んでおらず、3月が最も早い利下げ時期と見ています。これは、FRBが「データ次第」の姿勢を強調しており、雇用統計やインフレ指標を見極めてから判断するためです。

米国債利回りの上昇は、ハイテク株のバリュエーション(株価評価)にとっては重石となります。金利が上がると、将来の利益の現在価値が下がるため、成長株であるハイテク株には逆風となるためです。

また、金利上昇は住宅市場にも影響を与えます。米国の住宅ローン金利は10年債利回りに連動する傾向があり、住宅購入の需要が抑制される可能性があります。

今後は、トランプ新政権(1月20日就任)の財政政策も長期金利に影響を与える要因として注目されています。大規模な減税や財政出動が行われれば、国債発行増加と財政赤字拡大への懸念から、長期金利がさらに上昇する可能性があります。


来週はクリスマス休暇で薄商い、ボラティリティ警戒

12月25日のクリスマス休暇を控え、市場参加者が減少する中、トリプル・ウィッチング後の価格変動リスクが高まっています。


来週はクリスマス休暇を挟むため、市場参加者が大幅に減少し、例年以上に薄商いとなる見込みです。

12月19日は「トリプル・ウィッチング」(株式オプション、株価指数先物、株価指数オプションが同時に決済期日を迎える日)でした。この日を境に、オプション関連のポジションが大きく解消されたため、需給バランスが変化しています。

SpotGammaの創設者ブレント・コチュバ氏は「オプションの期限切れにより、クリスマス休暇明けの相場が価格変動の影響を受けやすくなる可能性がある」と警告しています。

来週以降の市場スケジュールは以下の通りです:

  • 12月25日(水): クリスマス休暇で世界主要市場が休場
  • 12月26日(木): 欧州市場の一部が休場(ボクシングデー)
  • 12月31日(火)-1月3日(金): 年末年始で東京市場等が休場
  • 1月6日(月): 市場が本格再開

この期間は市場の流動性が著しく低下するため、通常なら影響が限定的なニュースでも、相場が大きく動く可能性があります。特に為替市場では、少額の取引でも数円単位で動くケースもあります。

ロイターは「来週の東京株式市場で日経平均は神経質な展開が見込まれる。四半期末を控えて機関投資家のポジション調整が出やすく、需給面での売りが指数の重しになる可能性がある」と報じています。

現在、ドル円は157円台後半と、過去の為替介入水準(2024年は160円台で実施)に近づいています。薄商い時の為替介入は効果が大きいとされるため、日本政府・日銀が動くタイミングとして来週が選ばれる可能性も指摘されています。

投資家の皆さまにおかれましては、以下の点にご注意ください:

  1. ポジションサイズを通常より小さくする: 薄商いでの急変動に備える
  2. ストップロス(損切り)を必ず設定する: 想定外の値動きに対応
  3. レバレッジを下げる: 証拠金維持率に余裕を持たせる
  4. ニュースに敏感になる: 小さな材料でも大きく反応する可能性
  5. 年末年始は無理な取引を避ける: リスク管理を最優先する

年末年始は相場が荒れやすい時期です。慎重な資金管理を心がけていただければと思います。


今後の注目ポイント

来週以降で注目すべきポイントをまとめました。

⚠️ 短期的な注目点(来週~年末)

  • 為替介入の実施タイミング: ドル円158円接近時が最警戒、薄商い時が効果大
  • クリスマス・年末年始の薄商い: 流動性低下による急激な値動きリスク
  • 機関投資家のポジション調整: 四半期末を控えた需給変動
  • トランプ次期政権の発言: 為替・貿易政策に関する発信に注意

📅 中期的な注目点(2026年1月以降)

  • 1月6日(月)の市場再開: 年始一番の動きに注目
  • 1月10日(金)米雇用統計: 労働市場の冷え込み具合を確認
  • 1月20日(月)トランプ大統領就任式: 新政権の政策発表
  • 1月23-24日日銀金融政策決定会合: 追加利上げ時期の見極め
  • 1月28-29日FOMC: 2026年初回会合、利下げ据え置きの可能性大

🌍 長期的な注目点(2026年前半)

  • 日米金利差の推移: 縮小ペースが円相場を左右
  • 円キャリー取引の動向: ヘッジファンド等のポジション
  • AI関連株のバリュエーション: 過熱感と調整リスク
  • 消費関連セクターの業績: 個人消費の先行き
  • 金価格の4,900ドル到達: ゴールドマン予想の実現性

編集部からのコメント

今週は「利上げなのに円安」という、まさに市場の複雑さを象徴するような1週間となりました。

日銀が30年ぶりの高水準となる0.75%への利上げを決定したにもかかわらず、市場が注目したのは「今後の利上げペース」でした。植田総裁が明確な方針を示さなかったことで、「追加利上げは当分先」との見方が広がり、円売りが加速しました。

為替市場では「過去ではなく未来を織り込む」という原則が改めて示された形です。すでに利上げは市場に織り込まれており、投資家は「次の一手」を見据えて動いています。

片山財務相の「行き過ぎた動きには適切に対応する」との発言も、市場はほとんど反応しませんでした。過去の為替介入の効果が限定的だったこともあり、投資家は「口先介入では動かない」と判断しているようです。

ただし、ドル円が158円台に接近すれば、実際の為替介入の可能性が高まります。来週はクリスマス休暇で薄商いとなるため、介入を実施すれば効果が大きいというタイミングでもあります。日本時間の早朝や深夜など、市場参加者が少ない時間帯での動きには十分な警戒が必要です。

米国株式市場では、AI関連株とその他のセクターの二極化が鮮明になりました。ナイキの10%超急落は、個人消費の先行きに対する市場の警戒感を示しています。FRBの利下げペース減速により、消費者の負担が増えることへの懸念が背景にあります。

金価格の史上最高値更新は、市場の不透明感の高さを物語っています。ドル高と金高が同時に進行するという異例の状況は、投資家が「安全資産への逃避」を選好していることを示しています。

来週はクリスマス休暇で、多くの投資家がマーケットから離れます。しかし、相場は24時間動いており、予期せぬニュースで急変する可能性もゼロではありません。

年末年始は「相場から離れる」という選択肢も、立派なリスク管理です。無理にポジションを持ち続けるのではなく、新年に向けて心身ともにリフレッシュすることも大切だと思います。

ポジションを保有される方は、必ずストップロスを設定し、レバレッジを下げて、証拠金維持率に十分な余裕を持たせてください。薄商いの中での急変動は、想像以上に大きくなる可能性があります。

それでは、皆さま良い週末をお過ごしください。


締めの挨拶

本日の海外FX・投資関連ニュースは以上となります。

今週は日銀利上げという大きなイベントがありましたが、結果は市場予想を裏切る「利上げ後の円安」となりました。為替市場の奥深さと難しさを改めて感じる1週間でした。

来週はクリスマス休暇で市場参加者が大幅に減少します。薄商いの中では、普段なら影響が小さいニュースでも、相場が大きく動く可能性があります。ポジション管理とリスク管理を最優先に、慎重な取引を心がけていただければと思います。

年末年始は家族や友人と過ごす大切な時間でもあります。相場のことは一旦忘れて、しっかりリフレッシュしていただくことも、長期的な投資成功の秘訣だと思います。

次回の更新は、年明け1月6日(月)の市場再開後を予定しております。年始一番の相場動向をしっかりお届けしますので、どうぞお楽しみに。

それでは皆さま、良い年末年始をお迎えください!

FX編集部 田中

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