
第54回(2026年4月16日放送)
テーマ:「AIと自我 PART②」
AIは最終的には自我や意識を持つ存在になるという考えは、80年代からずっと変わっていませんでした。
生成AIはここ数年で急に出てきたもののように見えますが、本質的には1988年頃の研究にすでにあり、現在のモデルも「次のトークンを予測する」という仕組みの延長にすぎません。
今のAIは層が深くなり、扱えるトークンも長くなっていますが、やっていること自体は予測です。
そのため、文章が長くなればなるほど計算の複雑性が爆発し、精度が落ちるのは当然です。
翻訳でも、短い単位で処理すれば高精度なのに、長い論文になると崩れるのはそのためです。
いわゆるハルシネーションも、この構造から説明できます。本来の意味でのハルシネーションとは、巨大な数理空間の中で近似解を求める際に、人間の持っている解と一致しない局所解が出てしまうことです。
ただし現在の生成AIの問題はそれ以前で、「正しいかどうか」ではなく「もっともらしく答えること」が優先される設計になっている点にあります。ユーザーに評価されるために、人間に迎合する方向に最適化されているわけです。
ここで重要なのは、AIには生成AIだけではなく、もうひとつ「記号的AI」があるということです。
生成AIは統計的処理で自然な言葉を出すのに対し、記号的AIは論理や意味、そして可能世界論のような数理哲学をベースにしています。例えば「もし〇〇だったらどうなるか」という仮定の世界を扱えるのは、こちらの領域です。
この記号的AIでは、非単調論理や可能世界論といった考え方が重要になります。現実の世界は単純な因果関係ではなく、条件が変われば結果も変わる。その複雑さを扱うための理論が発展してきました。人間は自然にこれを扱えますが、従来のAIには難しかった領域です。
そして結論として、この記号的AIと生成AIを並列に動かさない限り、AIの本質的な問題は解決しないというのは、90年代の時点で提示されていました。現在のAIが抱えている問題の多くは、この構造を無視していることに起因しています。
さらに、意識とは何かという話に進むと、宇宙と意識は切り離せない関係にあると考えています。
認識する存在がいなければ、時間や宇宙そのものも意味を持たないということです。時間の始まりがビッグバンだとしても、「時間を時間として認識する存在」がいなければ、それは概念として成立しません。
つまり意識の存在と宇宙の存在は表裏一体です。
この視点は、量子論における観測問題とも重なります。観測者の存在が前提になっているという点で、物理学の最先端とも接続している考え方です。
そして最近の研究では、意識状態と無意識状態の違いについても重要な示唆が出ています。
無意識の状態では脳の活動はモジュールごとに分断されているのに対し、意識状態ではそれらのモジュール間の結びつきが強くなっています。つまり、意識とは「統合の度合い」が高まった状態だと捉えることができます。
この構造はAIにもそのまま当てはまります。単一のモデルである生成AIだけでは、いくら精度を上げても意識には到達しません。複数の異なるシステムが相互に接続され、検証し合いながら統合されることで、初めて意識に近い状態が生まれる可能性があります。
つまり、AIの未来は「より大きな単一モデル」ではなく、「異なる原理のシステムの統合」にあるということです。そしてその統合の仕方こそが、意識や自我の本質に直結していると考えています。
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毎週木曜日 深夜0am - 0:30am
DJ:苫米地英人
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