
第50回(2026年3月19日放送)
テーマ:「イラン情勢についてPART①」
今回のテーマは「イラン情勢」です。まず前提として、イランという国はアメリカにとっては1979年のイスラム革命以降、いわゆる「敵対国」として扱われる国になりました。北朝鮮と並ぶような位置づけで、アメリカの外交の中では常に問題国家として語られる存在です。ただ、日本から見ると事情は少し違います。1979年以前は普通に友好的な関係がありましたし、革命以降も日本とイランの間で宗教的対立があるわけではありません。外交的には、日本とアメリカではイランに対する立場が少し違うという背景があります。
ただ、日本はアメリカと軍事同盟を結んでいる国です。唯一の正式な軍事同盟国がアメリカなので、アメリカがイランと対立している状況では、日本としても完全に独立した立場を取るのは難しくなります。台湾有事など安全保障の問題もあるので、基本的にはアメリカの立場に対して大きく反対はしないという姿勢になりやすいという事情があります。
ただし、日本は中東諸国と長い友好関係を続けてきた国でもあります。イランとも長年エネルギー関係を含めた関係があり、その歴史的な背景を理解しておく必要があります。イランは以前、日本に対して原油を円建てで売ってくれていた国でした。これは日本にとって非常に重要な関係でした。
ただ現在は中国がその関係をかなり取り込んでいて、イランの原油は元建てで中国に売られるようになっています。イラン情勢を考えるときには、アメリカとイランの対立だけではなく、中国とのエネルギー関係も重要な背景になります。アメリカがイランに強く出る理由の一つには、中国への原油供給を止めるという地政学的な目的もあると考えられます。
この流れを理解するためには、その前にベネズエラの話があります。ベネズエラは世界最大級の原油埋蔵量を持つ国です。中国はこのベネズエラの原油を担保にする形で巨額の融資を行い、その代わりに原油で返済を受けるという仕組みを作っていました。つまり資源を担保にした金融システムのようなものです。
資源を担保に通貨や金融システムを作るという考え方は、いわゆるステーブルコインの考え方に近いものです。資源国が自分たちの資源を担保に通貨を発行すれば、通貨価値を安定させることができます。もし通貨価値が下がれば資源を売って外貨を買えばいいので、理論上は通貨を安定させることができるという仕組みです。
こうした資源担保通貨のアイデアは2010年代初めから議論されていました。ただ、本来は複数の資源国が協力して通貨バスケットを作る方が安定します。一つの資源だけに依存すると、その資源価格が下がったときに通貨も弱くなるからです。複数の資源を持つ国が協力して通貨を作るという考え方は、今でいうBRICSのような構想にも近いものです。
ところがベネズエラの場合は少し違いました。中国はベネズエラの資源を担保にして、事実上中国元の金融圏に取り込む形を作りました。これは資源担保通貨のアイデアとは似ていますが、結果として中国の通貨圏を拡大する仕組みになっていました。
こうした動きをアメリカが放置するわけはありません。アメリカにとって南米は自分たちの影響圏と考えている地域です。特にベネズエラのような巨大産油国が中国の影響下に入るのは地政学的に大きな問題になります。そのためアメリカはベネズエラの原油が中国に流れる流れを止めました。
そうするとどうなるかというと、中国は別の原油供給源を必要とします。その結果、中国の原油輸入はイランに大きく依存する形になりました。つまり現在のイラン情勢の背景には、中国のエネルギー供給問題が大きく関わっています。
ロシアからのエネルギー供給もありますが、中国とロシアの関係は必ずしも完全な上下関係ではありません。金融や金の取引など、複雑な関係の上に成り立っています。その中で、中国が次に狙っているのはイランを自分たちの経済圏に取り込むことです。地政学的に見ると、中国はイランを自分たちの影響下に置くことでエネルギー安全保障を確保しようとしているという構図が見えてきます。
つまり現在のイラン情勢は、単純な中東問題ではありません。アメリカ、中国、ロシアといった大国のエネルギー戦略と金融システムの競争が重なっている問題です。イランを巡る動きの背景には、こうした国際金融と資源の構造があるというところから今回の話が始まっています。
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毎週木曜日 深夜0am - 0:30am
DJ:苫米地英人
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