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6月11日(木)放送のテーマ:「利他性について Part②」

番組から
2026/06/17

Dr.苫米地 Cosmic Radio

テーマ「利他性について Part②」

第62回(2026年6月11日放送)


「利他性について」の第二回は、前回紹介された苫米地定理をさらに掘り下げながら、人間はなぜ利他的な行動を取るのかというテーマへと踏み込んでいきました。

今回は講義用に作成した『数学が苦手な参加者向け』の解説資料を読み解きながら、認知世界やコンフォートゾーン、そして利他性がどのように生まれるのかを説明していきます。

論文そのものは数式が中心ですが、その背後にある考え方は意外なほどシンプルだと語ります。

まず登場したのが『認知世界W』という概念です。人間は現在の状況だけを見て生きているわけではありません。目の前の出来事だけでなく、将来起こり得るさまざまな可能性を同時に評価しながら意思決定を行っています。認知世界とは、現在と未来を含めた可能世界全体のことを指します。

そして人は、その可能世界をすべて同じように感じているわけではありません。安心できる未来もあれば、不安を感じる未来もあります。そこで人間の認知は、それぞれの未来に順位付けを行います。この順位付けによって、どの未来に向かいたいのか、どの未来を避けたいのかが決まっていくのです。

そこから前回も登場した『トータルコンフォートゾーン(TCZ)』の話へと進みます。TCZとは、どんな状況に直面しても心理的な安定を取り戻せる世界の集まりです。

予想外の出来事が起きても立て直せる人はTCZが広く、わずかな変化で大きく動揺してしまう人はTCZが狭いということになります。

定理一が個人の認知についての理論だとすると、定理二は社会についての理論です。家族や地域社会、国家など、複数の主体が互いに影響を与え合うと、自然と共有されたコンフォートゾーンへ収束していくという考え方が紹介されました。

一方で、この仕組みは認知戦にも利用できます。共有領域を狭くしていけば、人々は小さな集団へ閉じこもり、対立しやすくなります。社会の分断も同じ数理構造で説明できると語ります。

そして今回の核心となったのが定理三です。ここで初めて『抽象度』という概念が導入されます。犬と猫の上位概念が動物であるように、抽象度が上がるほど、より多くのものを包摂できるようになります。定理二だけで考えると、人はどんどん小さな共有領域へ収束していきます。しかし抽象度を導入すると状況は変わります。より高い抽象度で世界を見ることで、これまで別々だった集団同士を包含できるようになるのです。

家族、地域、国家という違いを超えて『人間』という抽象度で考えれば共通点は大きく広がります。さらに生命や地球というレベルまで抽象度を上げれば、共有できる領域はさらに大きくなります。

定理三は、人間の認知が高い抽象度へ向かう時、システム全体がより大きな統合へ向かって収束することを示しています。そして、その結果として生まれるのが利他性です。

利他性とは道徳教育によって後から付け加えられるものではなく、人間の認知構造そのものから自然に生まれてくる現象だと説明されました。

後半では、この考え方を進化論と結び付けて説明します。ドーキンスの『利己的遺伝子』は人間の一側面を説明していますが、定理三で示される高い抽象度の世界までは説明できていないと語ります。進化の過程で人類は協力し、道徳を作り、大規模な社会を形成してきました。それは利己性に反して起きたのではなく、むしろ進化そのものが利他性を選択してきた結果だというのが今回の結論です。

人間には利己的な側面もあります。しかし同時に、より高い抽象度へ向かい、より大きな共同体を形成しようとする性質も持っています。そして進化的に見れば、その利他性こそが最も安定的で合理的な戦略になると説明されました。

最後には、平和共存こそが最も効果的な認知戦であるという話にもつながります。対立や分断は短期的には機能するかもしれませんが、長期的には不安定です。一方で、高い抽象度に基づく協力や包摂は自己持続的であり、進化的にも優位性を持ちます。

利他性とは理想論ではなく、人類が長い進化の中で獲得してきた最適解である。今回の放送では、その考え方が数理モデルを通して丁寧に解説された回となりました。

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毎週木曜日 深夜0am - 0:30am

Dr.苫米地 Cosmic Radio

DJ:苫米地英人

メール:cosmic@interfm.jp

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