
第56回(2026年4月30日放送)
テーマ:「なぜ戦争はなくならないのか?」
人間の行動は、身体的なレベルだけでなく、認知や社会のレベルにおいても、ある種の安定領域に収束する性質を持っています。
この安定領域はコンフォートゾーンとして表現され、さらに時間軸や未来のゴールを含めた形で拡張されたものがトータルコンフォートゾーンと考えられます。
個人レベルでは、人は自分にとって不快度が最小となる状態を選択する傾向があります。しかし人間は単独で存在しているわけではなく、常に他者との関係の中で行動しているため、その安定性は他者の状態とも密接に結びついています。
このため、複数の主体にまたがる安定領域として「共有トータルコンフォートゾーン(共有TCZ)」という概念が導入されます。これは、複数の主体が相互に整合しながら、全体として安定する領域に収束していく構造を表しています。
この共有TCZは、社会の安定や集団行動の基盤を説明する枠組みとして有効ですが、同時に重要な問題を内包しています。それは、人間の行動が近接した関係、すなわち家族や地域、組織といった限定された範囲で最適化されやすいという点です。
現実の社会制度、とりわけ選挙や企業組織においては、この低い抽象度での最適化が評価されやすくなっています。その結果として、集団間の利害対立が生じやすくなり、それが拡大したものが戦争として現れます。
一方で、人間には見知らぬ他者に対しても利他的に行動する能力があります。これは抽象度という概念で説明され、抽象度が高いほど広い範囲の主体を含めた判断が可能になります。
しかし抽象度を上げるほどコストも増加するため、人間はそのバランスを取りながら行動しています。この構造の中では、利他性は非合理ではなく、より広い領域における最適な行動として理解されます。
それでも戦争がなくならないのは、社会構造そのものが低い抽象度を強化する仕組みになっているためです。この構造が変わらない限り、戦争は繰り返されることになります。
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毎週木曜日 深夜0am - 0:30am
DJ:苫米地英人
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