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【Innovater’s Talk 】ashlyn小島未紅×三戸 Vol.1「販売する気のなかったブラが即完売のヒット商品に」

今回ご紹介するビジネスのプロフェッショナル「ビジプロ」は、付け心地が良くおしゃれなノンワイヤーブラジャーで起業した、株式会社ashlyn(アシュリン)の代表取締役社長、小島未紅さんです。

小島さんの開発したノンワイヤーブラジャーは、いま発売即完売となる大人気商品になっています。もともとは「一介のシステムエンジニアに過ぎず、起業なんて想像したことがなかった」という小島さんが、なぜ起業することになったのか。またTwitterを生かしたビジネスの作り方など、小島さんの話を3回に分けてご紹介します。

この記事はFMラジオ、InterFMで毎週日曜20時30分からお送りしている番組ビジプロで放送された内容と、未公開部分を併せて記事化しています。ビジプロは、サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさいなどの書籍や、個人M&A塾サラリーマンが会社を買うサロンで知られる事業投資家の三戸政和が、さまざまな分野の先駆者をゲストに招いて話を聞き、起業や個人M&Aなどで、新たな一歩を踏み出そうとしているサラリーマンを後押しする番組です。番組は三戸さんとの対談ですが、記事はゲストのひとり語り風に再構成しています。

音声アプリVoicyでは、ノーカット版「ビジプロ」を聴けますので、こちらもお楽しみください。

新しいモノを作りたいという意味で社名は「ashlyn」

会社名の「ashlyn(アシュリン)」という名前はアメリカの女性によく見られる名前です。多くの人に愛着を持ってもらいたいと、自分の子どもに名付けるように会社名としました。ashlynには灰色のアッシュの意味も掛かっていて、白でも黒でもない、その間にあるような新しいものを作りたいという思いも込めています。

私が開発した「24 h ブラ」というブラジャーは、ワイヤーを使わずホックもないというブラジャーで、締め付けないので付け心地が良いものでありながら、おしゃれで、胸の形も整えてくれるという新しいブラジャーです。ブラジャーのほかにも女性の生活を快適にする商品も開発していて、BELLE MACARON(ベルマカロン)というブランド名で販売しています。

販売方法はECのみで、いわゆる、DtoC(Direct to Consumer)と言われる領域で経営をしています。

SE時代の悩みに「解決できないなら自分で作ろう」

私はシステムエンジニアでした。学生時代もSEとして働き始めたときも、起業なんて想像したことはありませんでした。

システムエンジニアを選んだのは、もともとパソコンやインターネット、プログラミングに興味があり、趣味で何かを作ったりすることも好きだったので、システムでいろいろなモノを作ったり開発したりできるだろうと考えたからです。

新卒の入社ではNTTグループの会社に入り、画像や動画を保存するオンラインストレージサービス、わかりやすく言うと、dropbox の NTT版みたいなものを開発していました。このときは、プログラミングなど自分で勉強することが多かったので、残業も多く、かなり長い時間、仕事をしていました。

長時間働く中から出てきた悩みが、起業のきっかけとなりました。その悩みとは、ブラジャーを長時間つけることのストレスです。当時の私はデザイン性重視でブラジャーを選んでいました。

就職して働くようになると、ブラジャーの着用時間は物理的に長くなり、会社に出掛ける朝の7時から帰宅する夜の12時くらいまでつけ続けます。そうなることで感じたのが、ブラジャーのワイヤーによる締め付けの苦しさです。その苦しさは、仕事中でも、ときにはトイレの個室でブラジャーのホックを外して休憩をする必要があるくらいでした。

そんな仕事中のブラジャーの悩みは、私にとって大きなものとなりましたし、同じような悩みを持つ女性は多くいました。当時、ノンワイヤーで着心地が良いブラジャーはたくさんありましたが、着心地とデザイン性の両方が備わったブラジャーは探してもなかなかありませんでした。

「かわいくて楽なブラジャーがほしい」という思いは、「ないなら自分で作ろう」という思いに変わっていきました。それが入社2年目の冬で、そこから起業に向けた行動が始まりました。

商品を作る時点で門前払いが続いた

私はもともとはブラジャーについては素人で、専門的な知識はゼロでした。いまでもミシンは使えません。それでも起業に乗り出すことができたのは、作りたかったものが日頃から使っているブラジャーであり、家庭科の授業で縫製の経験があって、なんとなく作れそうだなというイメージがあったからです。

モノづくりの流れはシステムエンジニアのときと似ていました。最初に設計工程があり、そこで仕様やデザインを決めてそれが実現できるかどうかを検討した上で、実際のモノづくりに入るという流れです。

システム作りはプログラミングですから目に見えず難しい部分がありますが、ブラジャー作りは目に見えるものなので、ここを何センチ調節したいとか、そういうことはできそうだと思いました。

ブラジャーを作るために最初にやったのは工場を探すことでした。OLをしながらですから、毎日昼の12時から13時のお昼休みに、会社の給湯室で、ネットで調べた200件ぐらいの工場に片っ端から電話をかけました。

ただ、そのときは会社を作っていないので、「小島というものですが、ブラジャーを作りたいんです」と言うと、門前払いをされたりちょっと怒られたりして、個人でやるのは限界があるなと感じました。

最初の商品ができるまでに1年半

ブラジャー作りは、たくさんの工場に声を掛け、1社だけ応じてくれるところがありました。そこはブラジャーなどの下着のOEM(受託生産)をしている小規模な工場で、企画から一緒に作ってくれるところでした。

私からデザインはレースがいいとか、ワイヤーを使わないなどの概要を伝え、それに対してどういう素材がいいかなどの専門性の高いところを工場の方からアドバイスをしてもらって、構想が進んでいきました。そして、ようやくプロトタイプの商品が完成したのは、ブラジャーを作りたいと動き始めてから1年半くらい経った頃でした。

最初は、売るとか事業にするというイメージはあまり持っていませんでしたが、自分で考えた商品を作るために、作ってくれる工場を探し、工場の人と一緒にサンプルを作ったりしているうちに、商品を多くの人に届けたいと思うようになりました。

友達からもそんな商品があったらいいねと言われました。ニーズがあるなら売りたいと本気で考えるようになり、会社を立ち上げて、事業化を目指すことにしました。

勤めていた会社は副業が禁止だったので、会社を作る段階で退職をしました。その後はしばらく、派遣のOLをしながら自社の運営をしました。

クラウドファンディングは資金調達ではなくマーケティング利用

商品のプロトタイプができたところで取り組んだのがクラウドファンディングでした。クラウドファンディングは、商品のコンセプトを伝えて、買いたいと思った人に前金で買ってもらいます。最初のクラファンでは、30万円の資金を集めることができました。

クラファンは資金調達のためにする人が多いですが、私はマーケティング調査の意味合いで使いました。クラファンをすることで、24hブラをどういう人が買ってくれるのか、どういうところにニーズがあるのか、自分の考えている商品の訴求の仕方は正しいのかなどを検証したのです。

そして、ホームページを作ってブランドをオープンした段階で、2度目のクラウドファンディングをしました。このときは、新色が欲しいという要望があったので、新色発売のためのクラファンと銘打って、ブランドのプロモーションも兼ねて行いました。2回目は60万円ほどが集まりました。

2回のクラファンで集まったお金は90万円ほどです。大きな資金が集められたわけではありませんが、2回のクラファンでプレマーケティングができたことに加えて、クラファンをきっかけに新宿の伊勢丹で展示をさせて頂いたり、メディアに掲載されたり、SNSで話題になったりしました。クラファンには大きな効果がありました。

Twitterで拡散させるための発信方法

商品のことが少しずつ広まっていくと、売上につながるようになりました。大きかったのがTwitterによる発信でした。まだ売上がそれほど伸びていなかったときですが、Twitterでブラジャーの干し方についてつぶやいたら、5万いいねのバズが起き、Twitter 経由で、売上が初めて1日10万円になったのです。

このときの経験からTwitterとの相性がいいと思うようになり、SNSによる発信に、より力を入れるようになりました。

そして、Twitterのフォロワーも徐々に増え、拡散力も高まりつつあった2020年7月、年に一度のセールを行いました。すると日商1000万円を記録したのです。以来、売上は堅調となり、商品を発売すれば即完売という状態になっています。

Twitterでは、これまでに1万いいね以上のバズが20回近く起きています。私が心掛けているのは、Twitterを一つのコンテンツだと思って発信することです。Twitterで商品の紹介だけしていてもフォロワーさんは離れてしまいます。私は、フォロワーさんのためになる情報やもっと知りたいなと思ってもらえる情報を、定期的に発信するようにしています。

楽でかわいいだけじゃないブラだから評価されている

24hブラは、一時、モール系でも販売していましたが、売上がすごく伸びて、発売後すぐ完売してしまう状況になったので、いまは自社サイトのみの販売としています。自社サイトでも、月3回、0のつく日だけの販売です。

最近は他社も、「付け心地が楽でかわいい」という同じコンセプトの商品を出してきています。それでもうちの商品は、私が消費者目線でブラッシュアップし続けているものなので、他社とは差別化できていると思います。

他社製品と一番違うのは「補正力の高さ」です。ノンワイヤーのブラジャーは、ストレッチ素材だけで胸を支えますから、工夫をしないと、胸が横流れしてしまったり、下がったりしてしまいます。

24hブラは、両脇の下の部分を、パワーネットという伸びない素材と伸縮性を持つ素材をパネル状に縫い合わせるようにすることで、胸の形をキープするようになっています。

この縫製は複雑で、かなりの技術力が求められます。いま、ブラジャーの生産はほぼ中国などの海外に移っていて、日本にブラジャーを作っている工場はほとんどありません。そういう状況もあって、24hブラの再現性は難しいと思っています。

SNSでも、24hブラについて、「楽だ」とか「かわいい」という声だけでなく、「バストラインがきれいになった」「谷間ができた」という補正力の高さについて言及するものが上がっています。それが口コミとなって、購買にもつながっています。

300万円もあれば企業できる

商品を工場で作るには、最初にある程度のまとまったお金が必要になります。そのための資金のほか、起業に関わる費用、ホームページ作りなどプロモーションに関わる費用は、OL時代の貯金や退職金で貯めた230万円で賄いました。

その後、少しずつ実績ができたところで、日本政策金融公庫から500万円を借りました。私はその230万円と500万円だけで、ほかに出資を受けたりすることはなく、事業が軌道に乗るところまで持っていくことができました。

次回は、小島さんの「リピート70%超の商品を作るのに広告費はいらない」をお伝えします。

※この記事は、日曜20時30分からInterFMにて放送しているサラリーマンの挑戦を後押しするベンチャービジネス番組ビジプロの内容をまとめています。

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