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【Innovater’s Talk 】Buff 中内崇人×三戸 Vol.1「営業に強い組織は”決裁者率”をKPIに置いている」

今回ご紹介するビジネスのプロフェッショナル「ビジプロ」は、営業をより強くするスタートアップ、株式会社Buffを創業した中内崇人さんです。

営業に強い組織の作り方や創業での苦労話、それから趣味の話まで、中内さんから聞いた話を3回に分けてご紹介します。初回は中内さんのビジネスについて。営業に強い組織をどうやって作るのか、こと細かに聞いています。営業マン、必見です。

この記事はFMラジオ、InterFMで毎週日曜20時30分からお送りしている番組ビジプロで放送された内容と、未公開部分を併せて記事化しています。ビジプロは、サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさいなどの書籍や、個人M&A塾サラリーマンが会社を買うサロンで知られる事業投資家の三戸政和が、さまざまな分野の先駆者をゲストに招いて話を聞き、起業や個人M&Aなどで、新たな一歩を踏み出そうとしているサラリーマンを後押しする番組です。番組は三戸さんとの対談ですが、記事はゲストのひとり語り風に再構成しています。

音声アプリVoicyでは、ノーカット版「ビジプロ」を聴けますので、こちらもお楽しみください。

ヒトのステータスを上げる会社

僕は神戸大学を卒業してネット企業のDeNAに入り、ゲームのプランナーをやっていました。DeNAには2年半ほど勤めましたが、起業のために辞めて、2年間ほど、起業の可能性を探っていました。その試行錯誤の中で気づいたのが、人の成長を支援する会社を作りたいという思いです。

ロールプレイングゲームでは、味方のステータスを上げる魔法を総称してBuff魔法と呼びますが、まさにBuff魔法のように、人のステータスを上げる会社を作りたいと、Buffと名付けた会社を創業しました。

営業コンサルとセールステック

Buffの事業は2本立てで、営業を強くするためのコンサルティング事業と、営業活動を支援するセールステックを提供しています。営業版のライザップのようなイメージです。

コンサルティング事業では、営業を強くするためのプログラムを提供しています。そのプログラムを、お客さんの会社で一定期間、展開することで、僕たちは、営業の文化を変えるという表現をしていますが、その会社の営業文化を改革して、売上アップにつながると考えています。

セールステックのツールは、その会社の営業の現状を可視化して、何を改善すれば日々の改善につながるのかがわかる、いわゆるダッシュボードが見られるツールになっています。

営業に強い会社を研究して分かったこと

コンサル事業は、1回4ヶ月くらいの期間で展開するプログラムです。その期間で、その会社の営業組織の文化を作り変えようというものです。

会社にはそれぞれ、会社独自の文化があります。それは営業についても同じで、それぞれの会社にはそれぞれの営業文化があります。僕たち日本人の文化では、お箸を使って食事をするのが当たり前であるように、それぞれの組織の文化は、組織内の人の当たり前の行動を決めます。

起業前、営業のことはかなり研究しました。営業に強い組織といえば、キーエンスやリクルート、セールスフォースなどです。そんな組織を研究する中で、強い営業組織は共通して、高いレベルの営業文化を持っていることがわかりました。

たとえばある会社では、全員の営業マンが、1日当たりのアポ数を、9件という高いレベルで設定していました。そのくらいのレベルが当たり前ということで、全員の認識が一致していたのです。

それはアポ数だけにとどまりません。営業活動の記録を取るときの粒度でも、このぐらいの細かさで取るというのが、高いレベルで一定していました。いずれもが高い水準で揃っていて、彼らはそれらを意図的に可視化して、組織内で共有していました。

彼らにとっては、そんな高い水準で行動することが別につらいことでもなく、当たり前だという認識にもなっています。だから彼らの組織は営業に強かったのです。

営業を強くするには、そんな組織が持つ文化を再現して作れればいいのです。そして僕たちは、そのためのエッセンスをプログラムとして作り上げました。

売上を3倍にさせる実績を上げた

僕たちの営業プログラムを提供している先は、2種類に分かれます。急成長を望むスタートアップの会社と、変革を求めている中規模の会社です。

これまでの実績をあげれば、IT企業のスタートアップ、株式会社POLさんでは、営業部員1人当たりの売上が3倍になりました。中規模会社では、クラウドワークスさんでは売上の月間記録が出ました。従業員1500人の製造業、太陽工業さんには、1年くらい関わっていますが、営業文化が大きく変わったと好評をいただいています。

新人の立ち上がりが早くなる

顧客の方からは、営業目標の達成が可能になっただけでなく、営業文化の再構築のおかげで、新人の立ち上がりが早くなったと言われます。

営業チーム全体の水準が、高いレベルで可視化されたところに新人が入ってくると、新人にとってはその水準が当たり前なので、それに早く追いつかなきゃと頑張ります。新人はその文化にすぐ馴染んで、立ち上がりが早くなるのです。

文化は変えられるのか

営業文化をそんなにすぐ変えられるのかと思われるかもしれませんが、柔軟に取り入れようという姿勢の会社は、びっくりするくらいのスピードで変わります。

ある会社では、プログラム導入3ヶ月の時点で、「3ヶ月前の自分が信じられない」「低かった水準の頃はなんだったんだろう」という感想が出るくらい、ガラッと変わりました。変われる会社さんは本当に変わります。

最初のステップは営業の可視化

営業文化をどう変えていくのか。もちろん、会社がどういう状況かによって大きく変わりますが、基本的なパターンをお話しします。

最初のステップとして重要なことは、その会社の営業を可視化することです。営業活動は、お客さんとの面談内容や交渉過程、感触など、自分で記録をしないと、データとして残らない活動がほとんどです。そんな普段の営業活動について、そもそも記録ができていないと、可視化しようにもできません。それらの記録がまず必要です。

記録は、昔ながらの、議事録や営業日誌のようなテキストで残すものもありますが、最近、利用が広がっているのが、セールスフォースやハブスポットなどの営業支援ツールです。そんなツールを使うと、選択式でチェックを残して、分析可能な状態で記録することができます。リッチな機能としては、記録した情報を使って、自動的に先方にメールを送ってくれるなどの機能もあります。

営業文化の改革の最初のステップは、そんなツールを使って、日常の営業活動を、どんな人と会ったのか、現場担当なのか、管理職なのか、決裁者なのか、相手側は1人なのか2人なのか、商品のデモを行ったのか、どんなデモをしたのかなど、かなり細かな記録を取るものになります。そうすることで、その会社の営業活動が見えるようになります。

営業に強い組織で行われていること

ひとりの人がすごい売上を上げていて、それによって会社が支えられていることはよくあります。同時に、営業スキルが属人化されていて、そのトップセールスマンが何をして売れているのか、会社のほかの人には良くわからないということも少なくありません。

そういう会社でよく見られるのが、「○○さんはなぜ、そんな売れるんですか」という営業マン同士の会話です。そんな粒度が荒い会話では、営業スキルの向上にはなかなかつながりません。

一方、営業に強い組織ではどういう会話がされているかというと、たとえば、「〇〇さんはなぜそんな決裁者率が高いんですか」という会話です。決裁者率とは、自分のアポイントのうち、決裁者と会えているアポイントの比率です。決裁者に会える比率が高いことが、売上に直結するという事実がその会社では共有されており、僕たちが分析したところでも、決裁者率が売上に直結する重要なKPIであることがわかりました。

その会社では、営業マン同士の会話が、「なぜそんな決裁者率が高いんですか」→「アポの前に必ず電話して、上の人を呼んでほしいと打診してるよ」→「そのやり方を教えてほしい」→「スクリプトがあるので共有しよう」というふうに展開して、決裁者率を上げるためのやり方がみんなに共有されていくのです。

「どうすれば売上が上げられるんですか」という粒度ではなく、「決裁者率を上げるにはどうすればいいんですか」という粒度の、解像度の高い状態で会話ができて、営業活動の改善が行えるのが強い営業組織なのです。

ある会社では1つの商材に対して、20個のKPIを置いていました。そのKPIすべてにもちろん目標値が定まっていて、それも、先人たちの実績や経験をもとにした設定になっていますから、決して絵空事ではなく、達成可能で売上に直結するものになっていました。

その会社に合ったKPIを設定する

僕たちのプログラムでは、セールスフォースなどのツールで記録を取って、その会社の営業活動が可視化されたら、次にやるのが、その会社で売上を作れている営業マンの営業活動データを参考に、KPIを設定する作業です。その会社で売上を上げるための重要なKPIを見出して、それらの数字を上げるには具体的にどうすればいいのかを明らかにします。

たとえば、その会社に合ったKPIが10個、設定できたとしたら、営業マンたちは、自分はいまどのKPIが良くないのか、目標に対してどのくらいの改善が必要なのかを把握して、その改善のために、他の人に相談したり自分で悪い理由を分析したりして、アクションをしていきます。

営業支援ツールについて

僕たちのプログラムは、セールスフォースなどのツールの利用が前提になります。ですが、セールスフォースなどには、細かいKPIを一覧で見られてその良し悪しをパッと判断できるダッシュボードのような機能はありません。

そこを補完するのが、僕たちが提供しているツールです。僕たちのツールはセールスフォースなどと連携して、設定したKPIを一覧で見られて、改善のアクションにつなげやすいダッシュボード機能を持っています。

セールスフォースは周辺のセールステックの買収を積極的に仕掛けていますが、僕たちは買収されることを狙っているわけではありません。できるなら、セールスフォースの上を行きたいと思っています。

KPIの管理がめんどくさい?

細かくKPIが設定され、それを管理することを求められると、ノルマみたいに感じられたり、面倒くさいなと思われたりするかもしれませんが、そこはポジティブにとらえてほしいと思います。

KPIは先人の知恵です。その会社でそれまで営業をしてきた方々が、先ほどの会社で言えば、20個のKPIを目指せば売上アップにつながるということを見出してくれているのです。

営業マンなら、KPIが売上に直結する達成可能なものであるなら、それをやるべきという結論になるはずです。そんなKPIを、無数の先人が発掘してくれている状態というのは、すごくありがたいことだと思います。

イケてるKPIには”ペア率”もある

イケてるKPIには”ペア率”もある

営業活動を科学できているイケているKPIの例としては、先ほど紹介した決裁者率もそうですが、ペア率というものがあります。先方の決裁者と担当者の両方が同席しているアポイントのことをペアアポと呼んでいますが、自分のアポ全体に対して、ペアアポが占める割合がペア率になります。

ペア率がなぜイケてるかというと、売りにつながり、かつコントロール可能というKPIの大事な条件を満たしているからです。

商品によっては、決済者と現場で使う人が違うことがあります。使わない決済者は、商品の操作感などを説明されても理解できません。そんなときは、決裁者と現場の人に別々でアポイントしてそれぞれに話すよりも、同席してもらって説明やデモをした方がメリットは多いです。デモをして、担当者が喜んでいれば、決裁者にもそれが直で伝わりますし、部下が喜んでいるものを無下にはできないという気持ちも出てきます。

ペアアポではそういうことになるので、単なる決裁者だけを呼べているアポと、ペアができているアポでは、ペアアポの方が売上につながると考えられますし、僕たちの計測でも、それは証明できています。

ペア率を上げるには、お客さんと会う前に、決裁者とのアポなら「担当者も呼んでください」、担当者とのアポなら「決裁者も同席をお願いします」と事前にお願いすればいいので、コントローラブルという条件も満たしています。もちろん、そこでの有効な言い方もありますから、どうやって言えばいいかは工夫をして、ペア率の高い人の真似をして、PDCAを回していけばいいのです。

以上のように、営業活動を可視化して、その会社に合った重要なKPIを設定し、それぞれの営業マンが、普段からKPIを見ながら営業活動を行い、その改善もできる状態にするのが、僕たちのプログラムの目指すところです。それができるようになれば、その会社の営業文化は変わり、売上も上がっていくはずです。

次回は、中内さんの「起業するビジネスドメインの決め方」をお伝えします。

※この記事は、日曜20時30分からInterFMにて放送しているサラリーマンの挑戦を後押しするベンチャービジネス番組ビジプロの内容をまとめています。

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