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【Innovater’s Talk 】Buff中内崇人×三戸 Vol.2「起業するビジネスドメインの決め方」

今回ご紹介するビジネスのプロフェッショナル「ビジプロ」は、営業をより強くするスタートアップ、株式会社Buffを創業した中内崇人さんです。

前回は、中内さんが「営業に強い組織は”決裁者率”をKPIに置いている」というお話をお伝えしましたが、今回は「起業するビジネスドメインの決め方」をお伝えしたいと思います。

この記事はFMラジオ、InterFMで毎週日曜20時30分からお送りしている番組ビジプロで放送された内容と、未公開部分を併せて記事化しています。ビジプロは、サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさいなどの書籍や、個人M&A塾サラリーマンが会社を買うサロンで知られる事業投資家の三戸政和が、さまざまな分野の先駆者をゲストに招いて話を聞き、起業や個人M&Aなどで、新たな一歩を踏み出そうとしているサラリーマンを後押しする番組です。番組は三戸さんとの対談ですが、記事はゲストのひとり語り風に再構成しています。

音声アプリVoicyでは、ノーカット版「ビジプロ」を聴けますので、こちらもお楽しみください。

素直さと行動力~本当は教えたくないビジネスに必要な3つの力

僕の考える、「本当は教えたくないビジネスに必要な3つの力」は、「素直さ」と「行動力」と「覚悟」の3つです。

「素直さ」とは、その領域で、自分より秀でている人から素直に話を聞いて、聞いたものを全部吸収し、とりあえずやってみようという姿勢のことで、「行動力」とも紐づいています。

僕自身、素直さを持っていると思います。僕は、能動的に、ある分野について、この人に教えてもらおうと聞きに行くこともありますし、周囲からのアドバイスにもよく耳を傾けます。その人の話が参考になると思ったら、「なぜそんなふうに考えたんですか」とすぐに聞くこともできます。

僕は、ビジネスに重要なもののひとつに成長速度があると考えていますが、その成長速度を上げるために有用なのが「素直さ」と「行動力」で、その2つがセットになると、成長のレバレッジが効きます。

僕自身、自分にそんな素直さと、それに紐づく行動力があったからこそ、早く成長できたという実感があるのです。

素直さと行動力からたどり着いた起業

素直さと行動力から辿り着いた起業

元ゲームプランナーの僕が、全然経験のない営業という領域でなぜ起業したのかというと、以前やっていた別の事業で、自分が全然営業をできなかったという経験がきっかけでした。

営業に躓いた僕は、営業の強い会社にいた友人に相談をして、営業についての話を聞き始めました。聞き始めたら、その話がとても面白く、その話を全部吸収しようと思って、とにかく聞きまくりました。

その彼は、別の会社を経営していて、僕は彼のオフィスの居候でもありました。話を聞いているときは、それをビジネスにしようとか、彼を巻き込もうなどの打算もなく、ただただ、その話が面白かったから聞いていただけでした。彼としても、僕がやたら目を輝かせていろんな質問をしてくるので答えていただけだそうです。

結局僕は、彼を50時間くらい拘束して、話を聞き倒しました。そして、聞いた話を自分の中でまとめたものが、いまの会社で、コンサルとして提供するプログラムになったのです。

つまり、僕自身の素直さとそれに基づく行動力が、起業につながったし、その後の成長にも寄与しているのだと思います。ちなみに、その彼は共同創業者になっています。

うちの会社は、DeNAから出資を受けていて、南場智子会長からは「ビジョンと高い吸収力のあるチーム」という投資コメントをいただいています。そのコメントには、うちのチーム全員の素直さと行動力を評価してもらえたのだと、うれしく感じました。

ピボットも覚悟のう~本当は教えたくないビジネスに必要な3つの力

3つ目の力は「覚悟」です。これは、孫正義さんの言う「登る山を決めろ」という言葉と同じ意味ですが、自分がどこのドメインに取り組むのか、覚悟を持って決めるということです。

早く決めれば決めるほど、そのドメインの第一人者になりやすかったり、そこに詳しくなって、ほかの人から頼ってもらったりということが増えると思います。

そのドメインにどのくらいの期間取り組むかも決める必要がありますが、僕自身は、人の成長という領域に対して、何があっても10年間はやろうと決めました。いま、その覚悟はもっと強くなっています。

何に取り組むのか、最初の選択で間違えないためには、十分考える必要がありますが、一度決めた後は、その選択を正しいものにするくらいの気持ちでやるのがいいでしょう。

起業では、当たる事業を探ることをピボットといいますが、僕は、自分のやりたいことの方向性がブレなければ、その下の部分のどのドメインでやるのかは、ピボットしてもいいと思います。

僕の場合は、やりたいことの大枠が人の成長を支援することで、そのゴールは、人がもっと成長を楽しめる世界にしたいというものです。その大枠の中で、いまは営業という領域で順調にやっていますが、いずれは、営業以外の領域でもやりたいと思っています。ピボットをすることは、前向きであれば全然いいと思います。

毎日30分考えても苦ではなかったドメインで事業開始

僕が、人の成長を支援する領域でやりたいと気付いたのは、ある人のブログに書かれていた起業のための方法を実践したからです。その方法とは、起業するために、そのビジョンやどのドメインでやるかについて、毎日、時間を取って考えるというものです。

僕はそれに素直に従って、毎日30分、自分はこの人生で何を取り組みたいのか、起業でどんな世界を作りたいのかについて、紙に書き出したりして考えました。それを、会社を辞めてから3カ月間ぐらい、毎日実践しました。

毎日考える中で、いろいろなビジネスアイデアも思いつくのですが、僕の場合、思いつくビジネスはすべて、人の成長に帰するもの、そのためにやるものばかりでした。それで僕は、その領域が好きなんだとわかったのです。

またそんなとき、任天堂の創業者が、「起業をするなら、ずっと考えていても嫌ではない、続けることが苦痛ではないドメインがいい」と書いているのを読みました。

僕は、自分がどうやったら成長するのか、この人はなぜこんなに成長したのか、という類の話を聞くのが好きでした。だから、友人に営業について50時間質問攻めにすることにもなったのですが、僕にとって、この領域は苦もなく続けられるところでした。

つまり僕の場合、3か月間、毎日30分考え、「起業をしたければ続けるのに苦ではないものを」という言葉にも出会って、「これからの自分のドメインはここだな」とすとんと落ちたのが、営業という領域だったのです。

10事業実践したがすべて失敗

僕の失敗図鑑は、失敗のイベントというより、2年間ぐらいの長い話になります。僕は、DeNAを辞めて2年後にBuffを創業したのですが、その2年の間ずっと、事業案を考えては取り組んでということをやり続けていました。その間、1銭も売上が立たなかったというのが、僕の失敗図鑑です。

取り組んだ事業は10個くらいありました。それがことごとく、うまくいきませんでした。一番くだらなかったのは、オンラインでラップバトルをするというビジネスです。

当時ラップが流行っていて、僕は一視聴者として見ていたのですが、中でもフリースタイルのラップバトルがめちゃめちゃ面白いと思っていました。僕自身もラップバトルをうまくなりたいと思って、オンラインでラップバトルができたらいいんじゃないかと、事業化を考えたのです。

そして、オンラインで相手を探してラップバトルができて、終わったらフィードバックし合うプログラムを作って、事業として運営できないか、いろいろとやってみたのですが、いかんせん、市場が小さすぎて無理でした。

失敗の検証がうまくなった

2年間で10個のビジネスを失敗し続けたことで得たものがあります。検証のやり方がうまくなったことです。

スタートアップは失敗するのが当たり前です。スタートアップで大切なことは、いまやっている事業が正しいのか、間違っているのかという検証をいかに早くやるかです。

コストを掛けずに、新しい商品やサービスを試して検証するプロセスはリーンスタートアップといいます。僕のやった10個のビジネスの中には、時間をかけ過ぎたものがありましたし、ある検証方法を使えば、実際にプロダクトを作らなくても検証できるものもありました。僕は、そんな失敗を重ねることで、リーンスタートアップがうまくなったのです。

コンサル事業の検証プロセス

もちろん、実地で検証する必要のあるビジネスもあります。いまの僕のビジネスがそうです。

ビジネスを立ち上げた当初、僕自身、営業という領域に、経験も知識も乏しい状態でしたから、コンサル事業として作り上げた自分たちのプログラムが、本当に正しいかはわかりませんでした。ですから、それは実地で検証するしかなかったのです。

そして、このプログラムを、営業で困っている会社に持って行って、どんな反応をするかを見てみようと考え、10社ぐらいに営業をしたら、1社が契約に応じてくれて、実際にやらせてもらうことになりました。もちろん、お金もいただきながら、取り組みました。

その最初の1社が、株式会社POLさんでした。僕たちはその時期、ずっとPOLさんに出社をして、営業組織を一緒に作り替えていきました。その結果、売上を3倍以上にできて、プログラムの有効性を証明できたのです。

ここで証明できたからこそ、その後、コンサル事業を広げていけるメドがつき、さらにテクノロジーでも付加価値を出せるツールを作れて、ビジネスの2本柱が揃いました。これは、検証プロセスとしてすごく良かったと思います。

ちなみに、それまでの2年間、1円も売上を作れない中で、お金はどうしていたかというと、家については、DeNAの同期が、「辞めるとお金も大変だろうから、しばらくうちにいていいよ」と言ってくれたので彼の家に住み始め、たぶん彼は短期間のつもりだったと思いますが、あるとき「お金がキツかったらずっといていいよ」と言ってくれたのを真に受けて、結局、彼のワンルームで2年間を過ごしました。バーンレート(会社を経営するために消費するコスト)が低くなり、ありがたかったです。

次回は、中内さんの「テクノロジーに代替されない営業とは」をお伝えします。

※この記事は、日曜20時30分からInterFMにて放送しているサラリーマンの挑戦を後押しするベンチャービジネス番組ビジプロの内容をまとめています。

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