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【個人M&Aの完全入門ガイド】個人がM&Aすることは可能か?個人M&Aでできることやリスクは?どうやって進めるのか?-副業・起業・独立、様々な可能性を最大限に広げる個人M&Aを体系的に解説-

起業や独立を考えている人は個人M&Aも視野に入れてみよう

今までは、起業や独立をしようと考えたとき、ゼロから自分で会社を立ち上げて組織やビジネスをつくりあげていくという方法が主流でした。

ですが、起業や独立をして、安定した収入を得られる状態になるまでには、様々なリスクを負い、そして手間暇が必要になるでしょう。安定した収入を得られる状態にまで到達しないまま、力尽きてしまうスタートアップも数多くあります。

しかし、そんなリスクを負って、手間暇かけてゼロから組織やビジネスを作っていかずとも、最短で、経営の安定した会社のオーナー・経営者になれる方法があるのです。

それが、M&Aです。M&Aをして会社を引き継ぐということは、「すでに出来上がっている・成り立っているビジネスや組織をそのまま譲りうける」ということです。はたして、そんなことが本当に個人でもできるのでしょうか?できるとするのならば、実際にどのようにして買えばいいのでしょうか?今回の記事では、“起業や独立の初速スピードを最大化する個人M&A”について、解説していきます。

個人が「会社を買う」とは?

個人がM&Aをできるのか?

M&Aというと、一般的には、大きな企業同士で行われているイメージがあると思います。M&Aは、税務や法律、ファイナンスやM&A実務に関する専門知識を伴い、そういった観点から、企業ではなく個人、ひいては初心者が行うなど現実的には不可能なのではないかと言われてきました。

確かに、一昔前だと、個人がM&Aをするということは難しかったかもしれません。ですが、昨今、M&Aプラットフォームなどの小規模M&Aを促進するサービスの登場、国による事業承継の後押し、小規模M&Aのサポートやアドバイスを行うサービスの充実等もあり、個人や小さな中小零細企業によるM&Aも活発化してきました。

M&Aでできることやできないこと、リスクや必要になるリソースをしっかりと把握した上でなら、個人M&Aというのは、個人にとって副業・起業・独立などの可能性を大きく広げる有効な手段になりうるでしょう。

個人M&Aのメリットとは?

ゼロイチ起業と個人M&Aの比較

自分で会社を持つ、つまりオーナーになる方法は、➀自分でゼロイチの起業をする➁事業承継や個人M&Aによって会社を譲り受けるという2パターンがあります。

この2つのパターンを見比べた時に、圧倒的に難易度が高いのは➀の自分でゼロイチで会社を作ることです。「千三つ」という言葉がベンチャー業界には存在しますが、これは「新しく立ち上がった1000社のベンチャー企業のうち、上場を果たす会社はたった3社のみ」という意味です。優秀な起業家たちが生涯をかけて自分の会社を興し、死に物狂いで会社を経営しても、上場するほど成長させられるのは、そのうちたったゼロコンマ数パーセントなのです。

対して、➁のパターンにおいては、基本的に、その会社はそれまで経営が順調に行われていたところでしょう。その会社を引き継いだ後も、前のオーナーがやっていた通りのやり方をすれば、よほどのことがなければ、経営は滞りなく回るはずです。引き継ぐ会社が、10年以上経営が成り立っている実績などがあれば、安定度としてはかなり高いと言えるでしょう。そんな会社を引き継ぐことは、特異な能力を持たない普通の人でも十分にやっていけます。

後継者不足問題が、個人M&Aの買い手サイドにとっては追い風に

現在、日本では、127万社という膨大な数の中小企業がいま、廃業に追い込まれようとしています。廃業の理由は経営者の高齢化と後継者不足です。これだけの会社が失われると、そこで働く650万人の職も失われます。それによって失われるGDP(国内総生産)は22兆円と想定されています。この現状を指して、「大廃業時代」と言われています。

黒字廃業するような優良企業を個人で引き継ぐことができるという可能性

この廃業が見込まれている会社の中には、経営が順調で、大きな黒字を出している会社もあります。そういった会社が、後継者が見つからず、黒字廃業していくケースがあります。

こういった優良企業を探し、個人M&Aや事業承継によって比較的安い金額、あるいは無償に近い対価で引き継いでいくというのは、個人にとっても、廃業の危機にさらされていた売主にとってもwin-winになります。

国による事業承継に関する制度の充実強化

大廃業時代の問題を解決するには、127万社のうち、社会にとって残すべき会社を、ほかのだれかが承継する必要があります。承継によってその会社が残れば、その会社が社会に生み出していた価値、雇用も残ります。そこで、国や公的団体が事業承継を支援する制度を作り、事業承継の円滑化を進めています。

経営者による個人保証(経営者保証)解除の推進

経営者保証とは、金融機関から融資を受ける際に経営者が会社の連帯保証人になることです。企業が倒産して融資を返済することができなくなってしまった場合、企業の代わりに経営者個人が返済することが求められるようになります。

事業承継の際、既存借入に紐づいて、経営者保証も買主に引き継がれるという制約が事業承継の円滑化を阻害する1つの要因になっているという問題がありました。

そこで、この問題の解決策として、経営者保証に関するガイドラインが策定されました。このガイドラインは、法的拘束力はないものの、「中小企業・経営者・金融機関」が遵守することが期待されており、一定の条件を満たす企業の借入については、経営者保証解除の解除を進めていこうという金融機関の中での共通認識となっています。

事業承継税制の導入

中小企業では、経営と所有が一致しているというケースが多数あります。そのため、中小企業が事業承継を行う場合、経営権とともに自社株も経営者から後継者に引き継がれることが大半です。主に3つある事業承継のうち、役員・従業員承継と第三者承継においては、売却により自社株式の承継が多くの場合で行われます。

ところが、親族承継の場合に限っては、贈与や相続での承継が多いです。経営者が存命中は贈与税が、亡くなった後は相続税が発生するのです。すると、事業承継時に中小企業の経営に滞りが見られないときなどには、贈与税額や相続税額が思いもかけないほど大きくなることがありえます。事業承継した後の経営に、深刻な影響を与えることが考えられるのです。

これを解消するべく「事業承継税制」は、2009年度の税制改正でつくられました。さらに18年度の税制改正で、「特例事業承継税制」が創設。特例事業承継税制の適用があれば、自社株の贈与や相続時にかかる税金を“0”とすることも可能です。19年度税制改正でも個人事業主を対象とする事業承継税制が創設されることで、より大きな法的支援を事業承継で受けられるようになったのです。

参考:SMALL M&A.com

事業承継税制を活用し個人M&Aを成功させた事例

個人M&Aのリスクや起こりうる失敗とは?

買収資金の借入などの金銭的リスク

会社を買う際は、借入を行います。借入金には利息がつきます。利息を足した分を返済しなければいけません。しかし、借入はリスクを伴う一方で、借入を行わない経営が良いというわけではありません。ほとんどの会社がお金を借りて経営を行っています。それは、事業を素早く展開したりすることができるなどといったメリットがあるからです。

簿外債務

簿外債務とは、帳簿上に記載のない債務のことです。M&Aを行う際には、買う会社の評価(デューデリジェンス )が行われます。その中で、簿外債務が見つかるケースがありますが、簿外債務が反映されていない損益計算書を鵜呑みに買収価格を決定してしまうと、後ほどトラブルになってしまいます。初心者がM&Aを行うケースにおいては、簿外債務が見落とされる可能性があります。

参考記事:簿外債務とは?具体例や対策について

上記記事にて、M&Aを行う際によく発生する簿外債務の事例について解説しています。このような事例を踏まえつつ、入念にデューデリジェンス を行うことによって簿外債務のリスクは最小限にすることができます。

事業継続に関するリスク

会社がそれまでに築き上げてきた事業を半永久的に継続できると考えてしまうのは間違いです。M&A直後や数年は順調でも、その後、様々な要因で、売上が下がったり、費用が増大したりする可能性があるということは頭に入れておかなければなりません。例えば、ビジネス環境が変化し、これまでと同じような価格で仕入れを行ったり、商品を販売することができなくなる可能性もあります。また、従業員や取引先との関係性が悪化してしまうこともあるかもしれません。そういった変化にも対応していく気概や、リスクに対する許容は必要かもしれません。

経営能力

人それぞれ、強みや弱み、ビジネスや組織での立ち位置に関して向き不向きがあると思います。自分には合っていないビジネスに取り組むことになったり、経営に向いていない、もしくはその能力をまだ十分に持っていない方が、いきなり経営者になった場合、組織やビジネスとかみ合わず空回りすることもあります。個人M&Aにおいては、今一度自分の能力に向き合い、本当に上手くできるのかという想像を事前にしっかり行っておくのが良いでしょう。

このようにM&Aにはリスクがつきものです。しかし、ゼロから会社を立ち上げることに比べれば、リスクやかかる労力は小さいとも言えます。そういった側面を事前に把握しておき、買収先の検討において、リスクを最小化するための努力を行っていくことが必要でしょう。

本当に300万円で会社を買うことができるのか?

会社はどうやって探す?個人M&Aにおける会社の探し方

M&Aにおける案件の探し方としては、以下のようなパターンが考えられます。

・M&A仲介会社を利用する

・銀行や税理士から売却ニーズの紹介を受ける

・友人や知人経由で売却ニーズの紹介を受ける

・M&Aマッチングプラットフォームを利用する

・国や自治体、その他事業承継支援機関のような団体のサービスを利用する

個人が会社を探す際、特に数百万円以下で買えるような案件を探したい場合は、M&Aのマッチングプラットフォームを利用することをおすすめします。M&Aマッチングプラットフォームは、マッチングサイトのような形になっており、スマホやパソコンから、気軽に案件を検索したり、売り手と交渉・情報交換を行ったりすることができます。

M&Aマッチングプラットフォームとしては、以下のようなサイトがあります。

・TRANBI

・BATONZ

・SPEED M&A

・M&Aナビ

・M&A PARK

それぞれのプラットフォームにはそれぞれの特徴があるので、自分に合ったマッチングサイトを探すことが重要となります。

参考:M&Aマッチングサイト6社を比較

上記記事にて、M&Aマッチングサイト5社を比較しているので、是非読んでM&Aマッチングサイトの特徴を掴んでいただきたいです。スマホやパソコンがあれば簡単に調べることができる点においては、M&Aマッチングサイトは非常に利用しやすいですが、全国で売り手を探しているすべての会社が登録しているわけではありません。M&Aマッチングサイトだけでなく、税理士や銀行、事業承継支援機関からも情報を得て、自分の欲しいと思う条件に沿った会社を探すことが大切です。

300万円で買える会社にはどのような業種業態があるのか?

M&Aプラットフォームで、300万円以下の範囲で登録されている売却案件で多い業種業態をいくつかピックアップしています。

飲食業

飲食業は登録案件数が非常に多い業種の一つです。また、ビジネスモデルについても理解しやすく、未経験者でも買うハードルは低いでしょう。一方で、コロナ禍で借入を行っており、債務が過大になり、結果として安く売られているというケースも多いので、注視する必要があります。

ECやWEBサイト運営

ECやWEBサイトは、設備投資などが必要でなく、ライトアセットなビジネスのため、比較的扱いやすい業種でしょう。しかし、譲受後も、現在上がっている収益を再現性をもって立て続けられるのかどうか、またサイトやEC自体の集客力や集客の特性として、どのくらい持続性があるものなのかを吟味する必要はあるでしょう。

学習塾

学習塾は、特に地方で、経営者や先生が高齢となり引き継ぎ手を探しているケースが増えてきています。それぞれの塾において、指導方針、授業スタイル、生徒、単価など様々な特色があるでしょう。そういった特色を踏まえて、自分に合った塾や、既存の資産や実績を活かして経営していくことができそうな塾を探しましょう。

その他

エステサロン、美容院、小売店、フランチャイズ店、デイサービス、訪問介護事業など

他にも、製造業や印刷業、旅館や医院など、一見、300万円で買えるとすると割安なように感じられる会社の登録もあります。ですが、そういたケースでは、例えば、経営が行き詰っていて企業価値が棄損している、オーナーの体調不良、後継者不足、簿外債務(例えば、事業の停止時に、借りている土地の上にある工場を崩し、原状回復して返還しなければいけないという義務を負っており、B/S街の実質的負債になっている)を抱えていることなど理由として考えられ、しっかりと会社の中身を精査していく必要があるでしょう。

まとめ

今回は「個人M&A」という、起業や独立に向けた一歩目の踏み出し方の1つの選択肢について解説しました。特に後半に述べたM&Aプラットフォームは、スマホでも利用でき、無料でいつでも売却案件を探せます。

少しでも「個人M&A」という選択肢もありかなと感じた方は、M&Aプラットフォームで案件を見てみて損はないでしょう。

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